ギャラリー解説蛟蛟

書画

黄虎洞手習い、陽刻自用印一顆(現代、AD2025、10、18)

縦横・3.3×2.4cm

『後漢書』第五倫傳の一節をアレンジし、戰國篆文で刻し

た「一夜十往不眠」(一夜十往、眠られず)である。如何に

高潔な人でも、矢張り私心は捨て去り難い事である。第

五倫傳には、「或るひと倫に問ひて曰く、公に私有るかと

。對へて曰く、吾が兄の子常に病む、一夜十往、退きて

安寝す。吾が子疾有り、省視せずと雖も竟夕眠られず、

是の若きは豈に私無きと謂ふ可けんやと」と有る。しかし

、これこそが親の情と謂うものであり、人とはこの様な存

在であると思うのである。己は四十過ぎのおばさんにな

った娘達には、今でも可愛いと思う父親の情は有るが、

孫が可愛いと謂う祖父の情は、甚だ薄い。何故であろう

か、困った事だが、父親としての「私」が彊いのだろう。


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