〜箚記(筆記)類〜

零話17

  箚記(筆記)書とは、一種の学問的随筆書と考えればよい。その範囲は、経なら経だけ史なら史だけに限定したものや、読書備忘録的なものも有るが、大概は森羅万象から経・史・子・集にまで渉り、著者の学問的興味に沿いながら、著者の感じた学問的問題点を摘出して短い見解を提出している。この様な書は、主に宋代から出現するが、やはり考証学の展開と共に博学多識を旨とした清朝に多くみられる。そこで提出された学問的問題点は、可成り示唆に富んだ内容を含んでおり、現在それらが全て学問的に解決されている訳ではないにも関わらず、昨今あまり精読されることが少ない。
 ここに提示する箚記(筆記)書は、左側が乾隆59年の重刊本である宋の洪邁撰『容斎随筆』であり、右側が同治8年刊の顧炎武撰・黄汝成集釋『日知録集釋』である。尚、清初の大学者趙翼に関する箚記(筆記)書については、NO6を参照。

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