〜封泥譜録(印譜)〜

閑話17

 封泥とは、古の封緘のことで、繩の結び目に印泥を施しそれに印を押して封としたもので、『後漢書』ケ訓伝の注に引用される『東観漢記』に「訓の泥もて書を封ずるを好むを知る」と記されている事例が、それを指す。これが古印の一形態として着目されだしたのは晩清から民国にかけてであり、当時の金石家である王懿榮・陳介祺・呉式芬・羅振玉らに因って、泥封の蒐集や考釈・模刻などが行われているが、何しろ土泥であるため破損したものが多く、実際に使用されたと思われる総数に比して、残存の完品はさほど多くはない。それを集めた拓本や模刻を書籍に仕立てたものが封泥譜録であるが、形式としては、印譜の一種である。
 ここに提示する封泥譜録(印譜)は、光緒二十九年に羅振玉が影印した「鄭廣所藏封泥」である。尚、封泥の現物に関しては、NO、102を参照されたし。

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