兄弟牆に鬩げども、外其の務を禦ぐ

本ページは、同窓会報270号(平成22年12月出版)からの転載である。


 誠に一年とは早いもので、僅か九ヶ月程前に新たな同窓生(新卒業生)を迎え入れ、本年の定例総会を開いて半年後の現在、大学は新たな新入生を確保すべく、年内入試に鋭意努力している日々であります。
 リーマンショック以来の不況も長引き、大学経営を取り巻く環境も、内外共に厳しいものが有り、大学の経営陣には、更に格段の努力と改革が求められている昨今であると言えましょう。
 我が母校大東文化大学に在っても、長年参加してきた箱根駅伝に、来年は参加出来ないと言う結果となり、多くの同窓生が、悲しい思いと悔しさを、噛み締めておられる事と思います。
 「四海兄弟」と言う言葉が有りますが、世の中は、決してその様な状況ではありません。北に目を転ずれば北方領土、西を看れば尖閣諸島、南を見れば米軍基地、西を望めば日米同盟、誠に多事多難で、「兄弟の思い」どころか、「敵同士の殴り合い」的様相であります。
 しかし、我が大東文化の同窓の人々は、其れとは異なり、将に「兄弟の思い」を持っておられる人々の集まりである、と確信致しております。
 同窓に集う人々は、それこそ兄弟であります。縁有って大東文化大学と言う大屋の下に集い、談学を通じて兄弟となった仲間です。実の兄弟でも争いは有ります。まして談学を通じて兄弟となった以上、意見の相違や考え方の違いは有って当然でしょう。しかし、母校大東文化大学を愛する気持ち、永久なる発展と活躍を願う気持ちは、将に一つであろうと思います。
 中国の古典『詩経』の小雅鹿鳴の常隸の詩句中に、次ぎの如き言葉が有ります。「死喪の威、兄弟孔だ懐ふ。・・・脊令原に在り、兄弟難に急く。・・・兄弟牆に鬩げども、外其の務を禦ぐ」と言う言葉です。これは、「死の恐れに対し、思い合うのは兄弟なればこそ。・・・脊令が原野に居るが、艱難に赴くのは兄弟なればこそ。・・・兄弟は例え垣根の内側で言い争っていても、外からの侮りに対しては、一致協力して其れを防ぐものである」と言う様な意味になろうかと思います。
 この言葉の中でも、特に好きなのは、最後の「兄弟牆に鬩げども、外其の務を禦ぐ」であり、将に「兄弟なればこそ」であります。今こそ一同窓(兄弟)としてこの言葉を胸に刻み、少しでも母校が輝きを増し発展してくれることを、心から願っております。

     平成二十二年十一月                           於黄虎洞 

トップへ


[その他Cに戻る]