老心轉凄然

本ページは、大東文化大学東洋研究所『所報』NO63号、(平成27年6月刊行)からの転載である。

 

   老心轉凄然 
 新緑の時節も既に過ぎ、將に初夏に爲らんとする日々でありますが、皆々様には御清栄の事と拝察申し上げます。
 小生
、今般圖らずも此の四月より、東洋研究所所長と言う大任を拜命致し、「自は意はざりき」の感無きにしも非ずであり、果たして小生の如き愚鈍で粗野な輩に務まるものや否や、將又其の職責の重さ等々に、些か困惑狼狽し、老心何事か轉凄然たる心境であります。
 然りと雖も、唯嘆息するのみに時間を勞する事は許されず、東洋研究所と雖も大學内の一研究機關である以上、現況の如き大學が身を晒す環境の嚴しさは、取りも直さず研究所自體も感得せねばならぬ秋烈さであると、深く理解する所であります。
 本研究所は、僅か四人の専任研究員を擁するに過ぎざるも、日欧經交流・日中近現代政治史・中國天文學史・日中類書研究等に關わる、應に一騎當千・精鋭の士の集まりであり、此の四人を中心に全十班の研究班を構成し、學内外を問わず、八十人近くに垂とする研究者の方々が、各々専門とする各班に御參集賜はり、日々活發な研究活動を展開致しております。
 此れら各班の研究成果は、班の研究對象に含まれる内容である事を条件に、共同研究成果であれ將又個人的研究成果であれ、本研究所の研究著作物として、單年度或いは連年を問わず、鋭意出版公刊致しております。
 亦た、本研究所は、單に研究活動のみに邁進する組織では無く、研究成果を一般の人々に還元す可く、年に一度の公開講座と言う形式で、社會との接触を圖っており、更に此れも年に一度に過ぎませんが、海外の研究者を招いて講演會を開き、國際交流にも盡力致しております。
 此の四月以後は、所内會議を度々を開き、對外的に更なる活發な活動は出來ないものか、所蔵書籍の對外的公開に關する方法や如何、或いは研究所主催の総合的學會發表は開催可能や否や等々、互いのアイデアを提示し合い、忌憚のない激論を交わしております。
 一見外部からは、其の日常的且つ具體的活動状況が見え難き研究所であり、「一體何を行っているんだ」と、時には叱責を被る事も決して無い譯では有りませんが、専任研究員一同、斯様に孜孜兀兀として研究活動に從事し、日夜研鑽に励んでおります。
 小生も所長として、學部との兼任ではありますが、研究所の更なる發展的活動と、研究員諸士の研究支援等に、微力ながら努力を傾注して行く所存でありますれば、何卒皆々様の暖かい眼差しで、御指導・御鞭撻を賜りたく、宜しく御願い申し上げるものであります。

     平成二十七年五月                             於黄虎洞

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