〜聚珍(活字)版〜

閑話14

 聚珍版とは、基本的に活字版のことである。清朝に至り「活字」なる言葉が雅趣に欠けるとして「聚珍」なる用語を使用し出したに過ぎず、この点から言えば、銅活字であろうと、木活字であろうと、鉛活字であろうと、清朝の活字版であれば聚珍版である。しかし、木活字を使用した乾隆年間の武英殿聚珍版叢書が、あまりにも有名になったため、聚珍版と言えば「木活字本」と勝手に思いこんでしまう嫌いが往々にして生じているが、必ずしもそうではなく、「聚珍版」と明記してあっても、銅活字も有れば鉛活字も有り、特に清末には鉛活字の聚珍版が多々存在するので、判別には注意を要する。
 ここに提示する聚珍(活字)版は、上段が1870年代末の光緒初期に蒼頡篇校証(光緒五年)等の書籍を出版した、蘇州文學山房の「經典釋詞」である。版心下部の右側に文學山房、左側に聚珍板印とあるため、木活字本と思いこみ易いが、この本は、鉛活字の聚珍版である。しかし下段は、清末西冷印社版行の朱士端著「宜録堂収蔵金石記」で、版心下部の右側に西冷印社聚珍板、左側に山陰呉氏遯庵金石叢書とあるが如く、字体の美しい木活字を使用した近世木活字本である。尚、聚珍本に関しては、NO8NO83をご参照下さい。

[目次に戻る]