〜授業用備忘録〜 |
《卷 之 中》 10、使役形の代表的パターン 11、受身形の代表的パターン 12、疑問形の代表的パターン 13、反語形の代表的パターン 14、願望形の代表的パターン 15、推量形の代表的パターン
*否定の助動詞の活用 未 然・・・ず(ざら)、連 用・・・ず(ざり)、終 止・・・ず 連 體・・・(ざる)、已 然・・・(ざれ)、命 令・・・(ざれ) ○否定形の種類 否定形には、大きく分けて「六種類」が有ります。 @否定詞を單用するもの。 A否定詞と助動詞や動詞からなるもの。 B否定詞を重用するもの。 C否定詞と副詞からなるもの。 D否定詞が單獨で用いられるもの。 E特殊な用法のもの。 以下、此等を順次説明致します。 ★「不(弗)〜」 〜(セ)ず(讀み)、〜【し】ない(意味) *打ち消しの否定ですので、動詞から返ります。 弗レバ(レ)食ハ不ル(レ)知(二)ラ其ノ旨(一)キヲ也。(食はざれば其の旨きを知らざるなり。) 欲スレバ(レ)忠ナラント則チ不(レ)孝ナラ、欲スレバ(レ)孝ナラント則チ不(レ)忠ナラ。(忠ならんと欲すれば則ち孝ならず、孝ならんと欲すれば則ち忠ならず。) ★「非(匪)〜」 〜ニあらズ(讀み)、〜【で】ない(意味) *体言から返りますので、体言には必ず「ニ」が付きます。 富貴ハ非(二)ズ吾ガ願(一)ニ。(富貴は吾が願に非ず。) 以テ(レ)力ヲ服スル(レ)人ヲ者ハ非(二)ザル心服(一)ニ也。(力を以て人を服する者は心服に非ざるなり。) ★「無(莫・亡・罔・末・靡・勿・毋・蔑・无)〜」 〜(スルコト・スルモノ)なシ(讀み)、〜【が】ない(意味) 聖人ニ無シ(レ)夢。(聖人に夢無し。) 存(二)スル乎人(一)ニ者ハ莫シ(レ)良(二)キハ於眸子(一)ヨリ。(人に存する者は眸子より良きは莫し。) ★「勿(莫・亡・罔・末・靡・無・毋・蔑・无)〜」 〜スル(コト)なカレ(讀み)、〜するな・〜してはいけない(意味・禁止を表します) 過テバ則チ勿カレ(レ)憚ルコト(レ)改ムルニ。(過てば則ち改むるに憚ること勿かれ。) ★「未〜」 いまダ〜(セ)ず(讀み・再讀文字を使用)、まだ〜【し】ない・まだ〜【で】はない(意味) 萬里長征人未ダ(レ)還ラ。(萬里長征人未だ還らず。) ★「不(弗)能〜」 〜スル(コト)あたハず(讀み)、〜できない(意味・・「〜する能力がない」と言うニュアンスです) 其ノ人、弗(レ)能ハ(レ)應フルコト。(其の人、應ふること能はず。) ★「無(莫)能〜」 よク〜スル(コト・モノ)なシ(讀み)、〜できるものはない(意味・・「〜する能力があるものはいない」と言うニュアンスです) 吾ガ盾之堅キコト莫(二)キ能ク陷(一)スモノ也。(吾が盾の堅きこと能く陷すもの莫きなり。) ★「不可〜」 〜(ス)べカラず(讀み)、〜できない・〜するな(意味・・「〜することができない」「〜してはいけない」と言うニュアンスです) 井蛙ハ不(レ)可(三)カラ以ニ語(二)ル於海(一)ヲ。(井蛙は以に海を語る可からず。) ★「不可勝〜」 〜あゲテ〜(ス)べカラず・〜(ニ)たフべカラず(讀み)、ことごとく〜にしきれない・〜にたえきれない(意味) 穀不ル(レ)可(二)カラ勝ゲテ食(一)フ也。(穀勝げて食ふ可からざるなり。) 穀不ル(レ)可カラ(レ)勝フ(レ)食フニ也。(穀食ふに勝ふ可からざるなり。) ★「不得〜」 〜(スル)ヲえず(讀み)、〜できない(意味・・「〜する機會が無くてできない」と言うニュアンスです) 有ラバ(レ)所(二)恐懼(一)スル則チ不(レ)得(二)其ノ正(一)ヲ。(恐懼する所有らば則ち其の正を得ず。) ★「自非〜」 〜二あらザルよリハ(讀み)、〜でなかったならば・〜でない限りは(意味) 自リハ(レ)非(二)ザル聖人(一)ニ、外寧ケレバ必ズ有(二)リ内憂(一)。(聖人に非ざるよりは、外寧ければ必ず内憂有り。) *極めて稀ではありますが、「自」を假定の副詞「苟」と同じ様に見なし、「自《いやし》クモ〜バ」と假定で讀み、「假に〜でなかったならば」と言う意味を表す事が有ります。 自クモ非(二)ザレバ聖人(一)ニ、外寧ケレバ必ズ有(二)リ内憂(一)。(自くも聖人に非ざれば、外寧ければ必ず内憂有り。) ★「無(莫)不〜」 〜(セ)ざル(ハ・コト)なシ(讀み)、〜しないものはない(みな〜する)(意味) 舜ハ於(二)イテ天下之善(一)ニ無シ(レ)不ル(レ)從ハ。(舜は天下の善に於いて從はざる無し。) ★「非不〜」 〜(セ)ざルニあらズ(讀み)、〜しないのではない(必ず〜する)(意味) 非ザル(レ)不ルニ(レ)惡マ(レ)寒キヲ也。(寒きを惡まざるに非ざるなり。) ★「無(莫)非〜」 〜ニあらザル(ハ)なシ(讀み)、〜でないものはない(みな〜である)(意味) 風雨霜露、無キ(レ)非ザル(レ)教ニ也。(風雨霜露、教に非ざる無きなり。) ★「非無〜」 〜なキニあらズ(讀み)、〜がないわけではない(必ず〜がある・必ず〜がいる)(意味) 非ザル(レ)無(二)キニ其ノ謂(一)也。(其の謂無きに非ざるなり。) ★「無〜不(弗)〜」 〜として〜(セ・ナラ)ざル(ハ)なシ(讀み)、どんな〜でも〜しないもの(こと)はない(すべて〜は〜する)(意味) 偶有(二)リ名酒(一)、無(二)シ夕トシテ不(一)ルハ(レ)飮マ。(偶たま名酒有り、夕として飮まざるは無し。) ★「不可不〜」 〜(セ)ざルべカラず(讀み)、〜しなければならない・〜しないわけにはいかない(意味) 士ハ不(レ)可(三)カラ以テ不(二)ル弘毅(一)ナラ。(士は以て弘毅ならざる可からず。) ★「不〜不〜」 〜(セ)ずンバアラず(讀み)、〜しないことはない・〜しないではいられない(意味) 良農ハ不(下)爲(二)ニ水旱(一)ノ不(上)ンバアラ(レ)耕サ。(良農は水旱の爲に耕さずんばあらず。) ★「未嘗(曾)不〜」 いまダかつテ〜(セ)ずンバアラず(讀み)、これまで〜しなかったことないは(いままで必ず〜した)(意味) 至(二)リ於公ノ傳(一)ニ未(三)ダ嘗テ不(二)ンバアラ感憤歎息(一)セ。(公の傳に至り未だ嘗て感憤歎息せずんばあらず。) ★「不敢不〜」 あへテ〜(セ)ずンバアラず(讀み)、どうしても(しいて)〜しないわけにはいかない(意味) 有ラバ(レ)所(レ)不ル(レ)足ラ不(二)敢テ不(一)ンバアラ(レ)勉メ。(足らざる所有らば敢て勉めずんばあらず。) 否定詞と副詞とで構成される否定形は、一般的に「副詞が否定詞の上にあるもの」を「全部否定」と稱し、「副詞が否定詞の下にあるもの」を「部分(一部)否定」と稱し、送り假名も異なってきますが、 全ての副詞が此の様に判然と分かれる譯では有りませんので、注意が必要です。以下、代表的な副詞を擧げて、説明致します。 【常】(つねニ・つねニハ) ★「常不〜」全部否定 つねニ〜(セ)ず(讀み)、常に〜しない・いつも〜しない(意味) 種ウルニ(レ)之ヲ常ニ不(レ)及バ(レ)時ニ。(之を種うるに常に時に及ばず。)・・全部否定 ★「不常〜」部分否定 つねニハ〜(セ)ず(讀み)、いつも〜するわけではない・いつも〜とは限らない(意味) 伯樂ハ不(二)常ニハ有(一)ラ。(伯樂は常には有らず。)・・部分否定 【必】(かならズ・かならズシモ) ★「必不〜」全部否定 かならズ〜(セ)ず(讀み)、かならず〜しない・絶対に〜することはない(意味) 八卿和睦シ必ズ不(レ)棄テ(レ)鄭ヲ。(八卿和睦し必ず鄭を棄てず。)・・全部否定 ★「不必〜」部分否定 かならズシモ〜(セ)ず(讀み)、かならず〜するとは限らない・絶対〜する必要はない(意味) 勇者ハ不(二)必ズシモ有(一)ラ(レ)仁。(勇者は必ずしも仁有らず。)・・部分否定 【倶(同)】(ともニ・ともニハ) ★「倶不〜」全部否定 ともニ〜(セ)ず(讀み)、どちらも〜しない・同じように〜しない(意味) 我ト與(レ)汝倶ニ不ル(レ)行カ也。(我と汝と倶に行かざるなり。)・・全部否定 ★「不倶〜」部分否定 ともニハ〜(セ)ず(讀み)、同じように〜するわけではない・両方とも〜とは限らない(意味) 猶ホ恐ル清光不(二)ルヲ同ニハ見(一)。(猶ほ恐る清光同には見ざるを。)・・部分否定 【盡(殫)】(ことごとク・ことごとクハ) ★「盡不〜」全部否定 ことごとク〜(セ)ず(讀み)、すべて〜しない・すべて〜でない(意味) 財盡ク不(レ)能ハ(レ)勝(二)フコト其ノ求(一)メニ。(財盡く其の求めに勝ふこと能はず。)・・全部否定 ★「不盡〜」部分否定 ことごとクハ〜(セ)ず(讀み)、すべてが〜するわけではない・すべてが〜ではない(意味) 大抵若シ(レ)是ノ、不(レ)能(二)ハ殫クハ記(一)スルコト。(大抵是の若し、殫くは記すること能はず。)・・部分否定 【全】(まったク・まったクハ) ★「全不〜」全部否定 まったク〜(セ)ず(讀み)、すべて〜しない・すべて〜でない(意味) 以テ(レ)刀ヲ剥グモ(レ)之ヲ身ハ全ク不(レ)傷ツカ。(刀を以て之を剥ぐも身は全く傷つかず。)・・全部否定 ★「不全〜」部分否定 まったクハ〜(セ)ず(讀み)、すべてが〜するわけではない・すべてが〜ではない(意味) 觀(二)ルニ古今ノ文人(一)ヲ多ク不(三)全クハ了(二)ラ此ノ處(一)ニ。(古今の文人を觀るに多く全くは此の處に了らず。)・・部分否定 【甚(太)】(はなはダ・はなはダシクハ) ★「甚不〜」全部否定 はなはダ〜(セ)ず(讀み)、ひどく〜しない・たいへん〜しない(意味) 守尉長吏ノ教訓甚ダ不(レ)善ナラ。(守尉長吏の教訓甚だ善ならず。)・・全部否定 ★「不甚〜」部分否定 はなはダシクハ〜(セ)ず(讀み)、そんなに〜するわけではない・ひどく〜ようとはしない(意味) 雖モ(レ)知ルト不(レ)至(二)ラ太ダシクハ惜(一)ムニ。(知ると雖も太だしくは惜むに至らず。)・・部分否定 【久】(ひさシク・ひさシクハ) ★「久不〜」全部否定 ひさシク〜(セ)ず(讀み)、長い間〜しない・長い間〜でない(意味) 辭スルニ以(二)テシ疾病(一)ヲ、久シク不(レ)赴カ(レ)職ニ。(辭するに疾病を以てし、久しく職に赴かず。)・・全部否定 ★「不久〜」部分否定 ひさシクハ〜(セ)ず(讀み)、長い間〜するわけではない・長い間〜とは限らない(意味) 違逆之道ハ不(二)久シクハ全(一)カラ。(違逆の道は久しくは全からず。)・・部分否定 【兩】(ふたツナガラ・ふたツナガラハ) ★「兩不〜」全部否定 ふたツナガラ〜(セ)ず(讀み)、両方とも〜しない・両方とも〜でない(意味) 兩ツナガラ不(二)相傷(一)ハ。(兩つながら相傷はず。)・・全部否定 ★「不兩〜」部分否定 ふたツナガラハ〜(セ)ず(讀み)、両方とも〜するわけではない・両方が〜ではない(意味) 漢・賊ハ不(二)兩ツナガラハ立(一)タ。(漢・賊は兩つながらは立たず)・・部分否定 【再】(ふたたビ・ふたたビハ) ★「再不〜」全部否定 ふたたビ〜(セ)ず(讀み)、二度めも〜しない・二度めも〜でない(意味) 再ビ不レバ(レ)朝セ則チ削(二)ル其ノ地(一)ヲ。(再び朝せざれば則ち其の地を削る。)・・全部否定 ★「不再〜」部分否定 ふたたビハ〜(セ)ず(讀み)、二度とは〜しない・二度とも〜するわけではない(意味) 時ナル乎時、不(二)再ビハ來(一)タラ。(時なるかな時、再びは來たらず。)・・部分否定 【自】(みずかラ・みずかラハ) ★「自不〜」全部否定 みずかラ〜(セ)ず(讀み・・此の場合、「みずかラ」ではなく「おのずかラ」と讀む用例が多い)、自分自身で〜しない・自然に〜しない(意味) 人自ラ不(レ)忍ビ(レ)欺クニ。(人自ら欺くに忍びず。)・・全部否定 ★「不自〜」部分否定 みずかラハ〜(セ)ず(讀み)、自分自身では〜しない・自分自身では〜することがない(意味) 然レドモ不(二)リキ自ラハ意(一)ハ。(然れども自らは意はざりき。)・・部分否定 此の他にも、良く用いられるものに、【重】(かさネテ・かさネテハ)・【驟】(にはカニ・にはカニハ)・【少】(しばらク・しばらクモ)・【多】(おおク・おおクハ)・【一】(いつニ・いつトシテ)等が有ります。 ★「〜不(否)。」 しからず・〜いな(ヤ)。(讀み)、そうでない・そうでないのか(意味) 視(二)ヨ吾ガ舌(一)ヲ、尚ホ在リヤ不ヤ。(吾が舌を視よ、尚ほ在りや不や。)・・(不は不在の省略形です) ★「〜未。」 〜いまダシ(ヤ)。(讀み)、〜はまだです・〜はまだですか(意味) 寒梅著ケシヤ(レ)花ヲ未ダシヤ。(寒梅花を著けしや未だしや。)・・(未は未著花の省略形です) ★「不(者)〜」 しからず(ざ)ン(レ)バ〜(讀み)、そうでなければ〜・そうしなければ〜(意味) 若殺(二)セ沛公(一)ヲ。不者ンバ且ニ(レ)爲ラント(レ)所ト(レ)虜トスル。(若沛公を殺せ。不者んば且に虜とする所と爲らんとす。) 【敢】(あへテ) 「敢」は、否定詞の上に置かれた(全部否定の形)時は、「反語」を表し、否定詞の下に置かれた(部分否定の形)時は、「彊い否定」を表します。 ★「敢不〜」(反語) あへテ〜(セ)ざラン(ヤ)(讀み)、どうして〜しないだろうか(きっと〜する)(意味) 百獸之見テ(レ)我ヲ而敢テ不ラン(レ)走ラ乎。(百獸の我を見て敢て走らざらんや。)(反語) ★「不敢〜」(彊否) あへテ〜(セ)ず(讀み)、決して〜しない・強いて〜しない・無理に〜しない(意味) 彊秦ノ不(三)ル敢テ加(二)ヘ兵ヲ於趙(一)ニ者ハ。(彊秦の敢て兵を趙に加へざる者は。)(彊否) *尚、「肯」も「不肯〜」(肯《あへ》て〜せず)と讀みますが、(〜を肯《がえん》ぜず)とも讀めるように、共に「あへテ」と讀んでも、「敢」と「肯」では意味が大きく異なります。「敢」は「彊いて〜する・おしきって〜する」の意味を表しますが、「肯」は「〜を承知する」と言う意味です。次の例文で、其の違いを見比べて下さい。 非ズ(レ)不(二)ルニ敢テ言(一)ハ、乃チ不(二)ル肯テ言(一)ハ爾。(敢て言はざるに非ず、乃ち肯て言はざるのみ。)・・・けっして言わないのではなく、つまり言いたくないだけである。 【豈】(あニ) 「豈」は、一般的に「反語」を表しますが(場合に因っては疑問を表す時も有ります)、「豈」の下に否定詞が置かれた(全文否定の形)時は、「詠嘆」を表します。 ★「豈〜」(反語) あニ〜ン(ヤ)(讀み)、どうして〜するだろうか(きっと〜しない)(意味) 豈ニ有(下)ラン朝ニ爲(二)リ梁ノ將(一)ト暮ニ爲(中)ルコト唐ノ臣(上)ト乎。(豈に朝に梁の將と爲り暮に唐の臣と爲ること有らんや。)(反語) ★「豈不〜」(詠嘆) あニ〜ナラずヤ(讀み)、何と〜ではありませんか・何とまあ〜ではないか(意味) 景春曰ク、公孫衍・張儀ハ、豈ニ不(二)誠ノ大丈夫(一)ナラ哉ト。(景春曰く、公孫衍・張儀は、豈に難誠の大丈夫ならずやと。)(詠嘆) 【唯(惟・但・徒・直・只・第・啻・止・特・祇)・獨・終】(たダ・ひとり・ついに) 「唯」は、否定詞の上に置かれた(全部否定の形)時は、「否定の限定や彊調」を表し、否定詞の下に置かれた(部分否定の形)時は、「単に・・・だけではなく・・・、獨り・・・だけではなく・・・、結局・・・だけではなく・・・と言う、累加の内容」を表します。 ★「唯(惟・但・徒・直・只・第・啻・止・特・祇)・獨・終不〜」(否定の限定や彊調) たダ(ひとリ・ついニ)〜(セ・ナラ)ざるのみ(讀み)、單に(獨り・結局)・・・しない(でない)だけだ(意味) 直ダ不(二)ル百歩(一)ナラ耳。(直だ百歩ならざるのみ。)(否定の彊調) ★「不唯(惟・但・徒・直・只・第・啻・止・特・祇)・獨・終〜」(累加) たダニ(ひとリ・ついニハ)〜(ス・ナル)ノミナラず・・・(讀み)、單に(獨り・結局)・・・だけではなく・・・(意味) 不(下)惟ダニ於(二)イテ本紀(一)ニ多(上)カルノミナラ(レ)所(レ)諱ム、並ビニ列傳中モ亦タ多シ(レ)所(レ)諱ム矣。(惟だに本紀に於いて諱む所多かるのみならず、並びに列傳中も亦た諱む所多し。)(累加) 【亦】(まタ) 「亦」は、否定詞の上に置かれた(全部否定の形)時は、單に竝列を表す接續の「また」で、否定詞の下に置かれた(部分否定の形)時は、「詠嘆」を表します。 ★「亦不〜」(竝列の接續) まタ〜(セ・ナラ)ず(讀み)、また〜しない・また〜でない(意味) 怨ハ不(レ)在ラ(レ)大ニ、亦タ不(レ)在ラ(レ)小ニ。(怨は大に在らず、亦た小に在らず。)(竝列の接續) ★「不亦〜」(詠嘆) まタ〜ナラずヤ(讀み)、何と〜ではありませんか・何とまあ〜ではないか(意味) 求ムルコト(レ)剣ヲ如キハ(レ)此ノ、不(二)亦タ惑(一)ナラ乎。(剣を求むること此の如きは、亦た惑ならずや。)(詠嘆) 【復】(まタ) 「復」は、否定詞の上に置かれた(全部否定の形)時は、「ふたたび(重ねて)〜しない」という意味を表しますが、否定詞の下に置かれた(部分否定の形)時は、部分否定の意味を表す時と、普通の否定を表す時とが有りますので、譯す時に注意が必要です。 ★「復不〜」(否定) まタ〜セず(讀み)、ふたたび〜しない・重ねて〜しない(意味) 雖モ(レ)有(二)リト大臣(一)復タ不(二)信任(一)セ。(大臣有りと雖も復た信任せず。)(否定) ★「不復〜」(部分否定と否定) まタ〜セず(讀み)、二度とは〜しない(意味・・部分否定)、そのまま・それっきり・もとのとおり(意味・・否定) 兔不シテ(レ)可(二)カラ復タ得(一)而身ハ爲(二)レリ宋國ノ笑(一)ト。(兔復た得可からずして身は宋國の笑と爲れり。)(部分否定) 來(二)タリ此ノ絶境(一)ニ、不(二)復タ出(一)デ焉。(此の絶境に來たり、復た出でず。)(否定) 【曾(嘗)】(かつテ) 「曾(嘗)」は、否定詞の上に置かれた(全部否定の形)時であれ、否定詞の下に置かれた(部分否定の形)時であれ、共に過去の經験を表します。 ★「曾(嘗)不〜」「不曾(嘗)〜」(否定) かつテ〜(セ)ず(讀み)、全く・一度も・これまでに〜し(で)ない(意味・・否定) 孤嘗テ不(レ)料ラ(レ)力ヲ乃チ與(レ)呉戰フ。(孤嘗て力を料らず乃ち呉と戰ふ。)(否定) 魂魄不(二)曾テ來タリテ入(一)ラ(レ)夢ニ。(魂魄曾て來たりて夢に入らず。)(否定) 【竝(並)】(けっシテ) 「竝(並)」は、一般的に「ならブ・ならビニ・ともニ・すべテ」等と讀みますが、明・清以後の漢文では、否定詞の上に置かれた(全部否定の形)時は、「けっシテ」と讀み、彊い否定或いは否定の彊調を表す(中國語の並不是に近い)事が多々有りますので、注意を要します。但し、彊否であっても其の意味は、「決して・取り立てて・いっこうに・別に・さほど」等々、文脈や文章の内容等に因って「決して」から「さほど」まで、彊調の程度が可成り幅廣く使われます。 ★「竝(並)不(非・無)〜」(彊否) けっシテ〜(セ)ず・(ニ)あらズ・なシ(讀み)、決して・一向に・取り立てて・別に・さほど〜(し・で・が)ない(意味・・否定の彊調) 武皇之父、唐初起コシシトキ(レ)兵ヲ、竝シテ未ダ(レ)與ラ(レ)謀ニ、又無(二)シ戰功ノ可(一)キモ(レ)紀ス。(武皇の父、唐初兵を起こししとき、竝して未だ謀に與らず、又戰功の紀す可きも無し。)(彊否) 實ニ係(二)リ一人兩見(一)スルニ、竝シテ非(下)ズ兩人偶同(ニ)ジクスル姓名(一)ヲ者(上)ニ。(實に一人兩見するに係り、竝して兩人偶《たまたま》姓名を同じくする者に非ず。)(彊否) *使役の助動詞の活用 未 然・・・しめ、連 用・・・しめ、終 止・・・しむ 連 體・・・しむる、已 然・・・しむれ、命 令・・・しめよ ○使役形の種類 使役形とは、「他のものにある動作をさせる意を表す」語法で、大きく分けて「四種類」が有ります。 @使役を表す助動詞として動詞を用いるもの。 A使役の意味を暗示する動詞を用いるもの。 B前後の文脈や内容から使役に讀むもの。 C使役を表す助動詞として動詞を用い、假定を表すもの。 以下、此等を順次説明致します。 ★「使(令・教・遣・俾)〜」 〜(セ)しム(讀み・・此等の漢字は、元來動詞ですので、「〜を使ふ」「〜に令す」「〜に教ふ」「〜を遣はす」等、動詞本來の讀み方をする場合も多く有りますので、判別に十分注意して下さい)、〜させる・〜とさせる(意味) 令メテ(レ)知(二)ラ其ノ罪(一)ヲ而殺サン(レ)之ヲ。(其の罪を知らしめて之を殺さん。) 民ハ可ク(レ)使ム(レ)由ラ(レ)之ニ、不(レ)可カラ(レ)使ム(レ)知ラ(レ)之ヲ。(民は之に由らしむ可く、之を知らしむ可からず。) ★「使(令・教・遣・俾)〜 〜」 〜ヲシテ〜(セ)しム(讀み・・此等の漢字は、元來動詞ですので、「〜を使ふ」「〜に令す」「〜に教ふ」「〜を遣はす」等、動詞本來の讀み方をする場合も多く有りますので、判別に十分注意して下さい)、〜に〜させる・〜を〜にする(意味) 子路使(三)ム子羔ヲシテ爲(二)ラ費ノ宰(一)ト。(子路子羔をして費の宰と爲らしむ。) 令(二)ム將軍ヲシテ與(レ)臣有ラ(一レ)隙。(將軍をして臣と隙有らしむ。) ★「命・授・説・召・擧・勸・招・戒・詔・敕・遣・教」などです(讀み・・勸誘や説得・命令等の意味を表す他動詞が有る場合には、其の下の動詞に「〜シ(ム)」と使役の送り假名を付けます) 命(二)ジ豎子(一)ニ殺シテ(レ)雁ヲ烹シム(レ)之ヲ。(豎子に命じ雁を殺して之を烹しむ。) 魏主有リ(レ)疾。召(二)シテ司馬懿(一)ヲ入朝セシム。(魏主疾有り。司馬懿を召して入朝せしむ。) ★Aと明白な區別は有りませんが、たとえ使役の意味を暗示する動詞が使われていなくても、前後の文脈や文意の内容から判斷して、「〜シ(ム)」と使役の送り假名を付けます。 管仲ハ以(二)テ其ノ君(一)ヲ霸タラシム。(管仲は其の君を以て霸たらしむ。) 凡ソ免(二)レシメシ吾ヲ於厄(一)ヨリ者ハ、皆平日可キノ(レ)畏ル人也。(凡そ吾を厄より免れしめし者は、皆平日畏る可きの人なり。) ★「使(令・教・遣・俾)〜」 〜ヲシテ〜(セ)しメバ(讀み・・使役の假定の場合は、多く未然形の「しメバ」と讀み、あまり已然形の「しムレバ」とは讀みません。)・〜に〜させたならば・〜を〜としたならば(意味・・これは本來、假定形の句形ですが、使役を表す助動詞として動詞を用い、假定の句形を構成していますので、使役の句形の一つとして、説明します。) 但ダ使(二)メバ龍城ノ飛將ヲシテ在(一)ラ、不ラン(レ)教(三)メ胡馬ヲシテ度(二)ラ陰山(一)ヲ。(但だ龍城の飛將をして在らしめば、胡馬をして陰山を度らしめざらん。) 向ニ使(三)メバ陳餘ヲシテ少シク黠(二)カラ於信(一)ヨリ、信豈ニ得ン(レ)不ルヲ(レ)敗レ哉。(向に陳餘をして少しく信より黠からしめば、信豈に敗れざるを得んや。) *受身の助動詞の活用 未 然・・・れ(られ)、連 用・・・れ(られ)、終 止・・・る(らる) 連 體・・・るる(らるる)、已 然・・・るれ(らるれ)、命 令・・・れよ(られよ) ○受身形の種類 受身形とは、「他からの働きかけに因って、〜されるという意を表す」語法で、大きく分けて「五種類」が有ります。 @受身を表す助動詞として動詞を用いるもの。 A「爲〜所〜」の形を用いるもの。 B前置詞の「於・于・乎」を用いて受身を表すもの。 C受身の意味を暗示する動詞を用いるもの。 D前後の文脈や内容から受身に讀むもの。 以下、此等を順次説明致します。 ★「被(見・爲・所・遇・受・取)〜」 〜(セ)る・〜(セ)らル(讀み・・此等の漢字は、元來動詞ですので、「〜を被る」「〜を見る」「〜と爲る」「〜に遇ふ」「〜を取る」等、動詞本來の讀み方をする場合も多く有りますので、判別に十分注意して下さい)、〜される・〜の目にあう(意味) 被ルコト(レ)驅ラ不(レ)異(二)ナラ犬ト與(一)ニ(レ)鷄。(驅らるること犬と鷄とに異ならず。) 欲スレバ(レ)與ヘント恐ル(レ)見ヲ(レ)欺カ (與へんと欲すれば欺かるを恐る。) ★「〜ノため〜セらル」の形で讀んでも、「〜ノ〜スルところトなル」の形で讀んでも、意味は共に變わらず、「〜に〜される・〜に〜された」「〜の〜するところとなる・〜の〜するところとなった」となります。 爲(二)ニ秦ノ將王翦(一)ノ所ルル(レ)戮セ也。(秦の將王翦の爲に戮せらるるなり。) 爲(二)ル秦ノ將王翦ノ所(一)ト(レ)戮スル也。(秦の將王翦の戮する所と爲るなり。) ★前置詞の下には名詞が置かれ、其の名詞から前置詞の上の動詞に返り、「〜ニ〜(ラ)ル」と讀み、「〜に〜される」という意味を表します。 趙ハ數困(二)メラル於秦(一)ニ。(趙は數しば秦に困めらる。) 獲(二)ラルルニ乎上(一)ニ有リ(レ)道。(上に獲らるるに道有り。) ★「封・謫・任・拜・補・敍・賜・禄・誅・廢・殺・削」などです(讀み・・此等の動詞が使われている行爲の對象が、目下の立場である場合には、其の動詞に「〜(ラ)ル」と受身の送り假名を付けます) 以テ(レ)功ヲ封(二)ゼラル武安侯(一)ニ。(功を以て武安侯に封ぜらる。) 聞(三)ク君ノ謫(二)セラレシヲ九江(一)ニ。(君の九江に謫せられしを聞く。) ★Cと明白な区別は有りませんが、例え受身の意味を暗示する動詞が使われていなくても、前後の文脈や文意の内容から判斷て、「〜(ラ)ル」と受身の送り仮名を付けます。 仁ナレバ則チ榮エ、不仁ナレバ則チ辱メラル。(仁なれば則ち榮え、不仁なれば則ち辱めらる。) 狡兔死シテ走狗烹ラレ、飛鳥盡キテ良弓藏メラル。(狡兔死して走狗烹られ、飛鳥盡きて良弓藏めらる。) ○疑問形の種類 疑問形とは、「疑問や質問の意を表す」語法で、大きく分けて「四種類」が有ります。 @疑問詞を用いるもの。 A疑問終尾詞を用いるもの。 B疑問詞と疑問終尾詞を併用するもの。 C「知」と「不知」を用いるもの。 以下、此等を順次説明致します。 ★「何(胡・詎・奚・曷・那)〜」 なにヲカ〜・なんゾ〜・いづレ〜・いづク〜(讀み)、なにを〜・どうして〜・いつ・どこ・どの・どちら・どこに〜(意味) 衞君待チテ(レ)子ヲ爲サバ(レ)政ヲ、子將(二)ニ・ト奚ヲカ先(一)ニセント。(衞君子を待ちて政を爲さば、子將に奚〈なに〉をか先にせんとすと。) 曰ク、夫子ハ何ヲカ爲スト。(曰く、夫子は何〈なに〉をか爲すと。) 困窮如シ(レ)此ノ、何ゾ不ル(レ)耕サ。(困窮此の如し、何〈なん〉ぞ耕さざる。) 本是レ同根ニ生ズルニ、相煎ルコト何ゾ太ダ急ナル。(本是れ同根に生ずるに、相煎ること何〈なん〉ぞ太だ急なる。) 田園將ニ(レ)蕪レント、胡ゾ不ル(レ)歸ラ。(田園將に蕪れんとす、胡〈なん〉ぞ歸らざる。) 子曰ク、女奚ゾ不ル(レ)曰ハ。(子曰く、女奚〈なん〉ぞ曰はざる。) 鴻雁那ゾ從(二)リ北地(一)來タル。(鴻雁何那〈なん〉ぞ北地より來たる。) 丞相ノ祠堂何レノ處ニカ尋ネン。(丞相の祠堂何〈いづ〉れの處にか尋ねん。) 若欲(二)ス何クニ之(一)カント。(若何〈いづ〉くに之かんと欲す。) ★「安(烏・焉・悪・庸)〜」 いづクンゾ・いづクニカ(讀み)、どうして〜・どこに〜(意味) 君安クニンゾ與(二)項伯(一)有ル(レ)故。(君安〈いづ〉くんぞ項伯と故有る。) 明眸皓歯何クニカ在ル。(明眸皓歯何〈いづ〉くにか在る。) 懼ル(レ)傷ツケンコトヲ(レ)我ヲ、焉クニカ逃レン(レ)之ヲ。(我を傷つけんことを懼る、焉〈いづ〉くにか之を逃れん。) 今蛇安クニカ在ル。(今蛇安〈いづ〉くにか在る。) ★「何爲(奚爲・胡爲)〜」 なんスレゾ(讀み)、どうして〜・どういうわけで〜(意味) 何爲スレゾ斬(二)ルト壯士(一)ヲ。(何爲〈なん〉すれぞ壯士を斬ると。) 胡爲スレゾ君遠クニ行クヤ。(胡爲〈なん〉すれぞ君遠くに行くや。) ★「誰(孰)〜」 たれカ・たれゾ・たれヲカ(讀み)、だれが〜・〜はだれだ・だれを(意味)。 *「孰」を「いづレ」と讀む場合は、比較を表します。 弟子誰ヲカ爲スト(レ)好ムト(レ)學ヲ。(弟子誰をか學を好むと爲すと。) 五穀不(レ)分カタ、孰ヲカ爲(二)ス夫子(一)ト。(五穀分かたず、孰をか夫子と爲す。) *創業ト守成ト孰レカ難キト。(創業と守成と孰〈いづ〉れか難きと。) ★「幾何(幾許)〜」(数量や時間などを問う疑問数詞です) いくばくカ・いくばくゾ(讀み)、どれくらい・どれほど(意味) 浮生ハ若シ(レ)夢ノ、爲スコト(レ)歡ヲ幾何ゾ。(浮生は夢の若し、歡を爲すこと幾何ぞ。) 人生幾何ゾ、誰カ能ク無カラン(レ)偸ムコト。(人生幾何ぞ、誰か能く偸むこと無からん。) 不(レ)知(二)ラ幾許カ猶ホ流傳(一)スルヲ。(幾許か猶ほ流傳するを知らず。) 相去ルコト復タ幾許ゾ。(相去ること復た幾許ぞ。) ★「何如(何若・何奈)〜」(状態・程度・事實・是非などを問います) 〜ハいかん(讀み)、〜はどうであるか・〜はどのようか(意味) 以(二)テ五十歩(一)ヲ笑(二)ハバ百歩(一)ヲ則チ何如ト。(五十歩を以て百歩を笑はば則ち何如と。) 其ノ賢ナルコト何若ト。(其の賢なること何若と。) ★「如何(若何・奈何)〜」(動作・手段・方法・理由などを問います) いかん・いかんゾ・いかんセン(讀み)、〜はどんなものか・〜はどのようにするのか・〜をどうするのか(意味) 國君欲ス(レ)養(二)ハント君子(一)ヲ、如何セバ斯ニ可キカト(レ)謂フ(レ)養フト矣。(國君君子を養はんと欲す、如何せば斯に養ふと謂ふ可きかと。) 沛公大イニ驚イテ曰ク、爲スコト(レ)之ヲ奈何セント。(沛公大いに驚いて曰く、之を爲すこと奈何せんと。) *「手段や方法を問うため、目的語を伴う事が有りますが、其の時は目的語を「如」と「何」の間に挿入し、「如」と「何」が離れていても、此の二字で「いかん」と讀みます。 如(レ)之ヲ何セバ則チ可ナラン也。(之を如何せば則ち可ならんや。) 虞兮虞兮、奈(レ)若ヲ何セン。(虞や虞や、若を奈何せん。) ★「乎(也・哉・耶・邪・與・歟・也耶・也哉・乎哉・乎邪・乎耶)、等」 〜か・〜や(讀み)、〜か(意味) *原則として、接續する語が連體形の場合は「か」と讀むことが多く、終止形の場合は「や」と讀みます。 十世可キ(レ)知ル也。(十世知る可きか。) 曰ク、有(下)リ一言ニシテ而可(二)キ以テ終身行(一)フ(レ)之ヲ者(上)乎ト。(曰く、一言にして以て終身之を行ふ可き者有りやと。) 忘(三)レタル越人之殺(二)セシヲ而ノ父(一)ヲ邪。(越人の而の父を殺せしを忘れたるか。) 是レ遵(二)フ何ノコ(一)ニ哉。(是れ何のコに遵ふや。) 可(三)キ以テ爲(二)ス有道之士(一)ト乎哉。(以て有道の士と爲す可きか。) 過リシ(レ)我ニ者ハ非ズ(レ)子ニ也耶。(我に過りし者は子に非ずや。) 天將(三)ニ・ル復(二)興セント王氏(一)ヲ也歟。(天將に王氏を復興せんとするか。) *「乎」には、「呼びかけ」や「輕い肯定」を表す場合が有る事に、注意して下さい。 孔子曰ク、由乎。(孔子曰く、由や。) 子曰ク、必ズヤ正サン(レ)名ヲ乎。(子曰く、必ずや名を正さんか。) ★「孰〜乎・胡〜也・豈〜邪・何爲〜也・奚以〜也、等」 なんゾ〜か・たれカ〜や・あニ〜か・なんすレゾ〜や・なにヲもっテ〜や(讀み)、どうして・だれが・一体どうして・どういうわけで〜か(意味) 胡ゾ不(下)ル以(二)テ其ノ真(一)ヲ往(上)カ也。(胡ぞ其の真を以て往かざるか。) 孰カ有リ(レ)甚(二)ダシキモノ於予(一)ヨリ乎。(孰か予より甚だしきもの有りや。) 羽ハ豈ニ其ノ苗裔邪。(羽は豈に其の苗裔か。) 何爲レゾ不ル(レ)去ラ也。(何爲れぞ去らざるや。) 奚ヲ以テ知(二)ル其ノ然(一)ルヲ也。(奚を以て其の然るを知るや。) ★「知〜・不知〜」 しンヌ〜・しラず〜(讀み)、一體〜であろうか・はてさて〜であろうか(意味) 知ンヌ有(二)ルヲ行商ノ來タリテ買(一)フコト(レ)茶ヲ。(知んぬ行商の來たりて茶を買ふこと有るを。) 不(レ)知ラ明鏡ノ裏、何レノ處ニカ得(二)タル秋霜(一)ヲ。(知らず明鏡の裏、何れの處にか秋霜を得たる。) ◆參 考◆ これは一見すると「不聞」「不見」「不言」「不知」の単純否定のように見えますが、文脈上「聞かずや〜を」「見ずや〜を」「言はざるや〜を」「知らざるや〜を」と読み、「〜しない(してない)のですか、(本当は〜しているのでしょ)」と言う意味で、肯定的意味合いを内包した疑問を表します。 ★「不〜、〜」〜セず(ザル)ヤ、〜ヲ(讀み)、〜を〜しない(してない)のですか(本当は〜してるでしょ)(意味) 君不ヤ(レ)聞カ、漢家山東ノ二百州、千村萬落生(二)ズルヲ荊杞(一)ヲ。 (君聞かずや、漢家山東の二百州、千村萬落荊杞を生ずるを。) 汝不ヤ(レ)見、沙場ノ戦ノ苦ヲ。 (汝見ずや、沙場の戦の苦を。) 我ガ表妹不ルヤ(レ)言ハ、冀ハクハ以(二)テ庭中ノ柳枝(一)ヲ繋(二)ガンコトヲト郎ガ舟(一)ヲ。 (我が表妹言はざるや、冀はくは庭中の柳枝を以て郎が舟を繋がんことをと。) 王不ルヤ(レ)知ラ、唐家既ニ有(二)チシヲ天下(一)ヲ。 (王知らざるや、唐家既に天下を有ちしを。)○反語形の種類 反語形とは、自分の意見を彊調する爲に、「反對のことを疑問的に述べる」語法(字面とは逆の意味になる)で、大きく分けて「四種類」が有ります。形式が疑問形と同様である爲、前後の文脈に因って判斷する必要が有ります。疑問形は、「カ」「ヤ」で結びますが、反語形は「ン(ヤ)」で結びます。 @疑問詞を用いるもの。 A疑問終尾詞を用いるもの。 B疑問詞と疑問終尾詞を併用するもの。 C前後の文脈や内容から反語に讀むもの。 以下、此等を順次説明致します。 ★「何(胡・詎・奚・曷・那)〜」 なんゾ〜ン(ヤ)(讀み)、どうして〜だろうか(いや〜だ)(意味) 奚ゾ其レ爲サン(レ)爲スヲ(レ)政ヲ。(奚ぞ其れ政を爲すを爲さん。) 奚ゾ取(二)ランヤ於三家之堂(一)ニ。(奚ぞ三家の堂に取らんや。) 爲スハ(レ)樂ヲ當ニ・べシ(レ)及ブ(レ)時ニ、何ゾ能ク待(二)タンヤ來茲(一)ヲ。(樂を爲すは當に時に及ぶべし、何ぞ能く來茲を待たんや。) ★「寧(安・烏・焉・悪・庸)〜」 いづクンゾ〜ン(ヤ)(讀み)、どどうして〜だろうか(いや〜だ)(意味) 子安クンゾ能ク爲(二)サンヤ之ガ足(一)ヲ。(子安くんぞ能く之が足を爲さんや。) 割クニ(レ)雞ヲ焉クンゾ用(二)ヒンヤ牛刀(一)ヲ。(雞を割くに焉くんぞ牛刀を用ひんや。) ★「安(焉・悪)〜」 いづクニ(カ)〜ン(ヤ)(讀み)、どこに〜しようか(いや、どこにも〜しない)(意味) 君子ハ去リテ(レ)仁ヲ悪クニ乎成サン(レ)名ヲ。(君子は仁を去りて悪くにか名を成さん。) ★「何(焉・奚)〜」 なにヲ(カ)〜ン(ヤ)(讀み)、なにを〜しようか(いや、なにも〜しない)(意味) 樂(二)シミテ夫ノ天命(一)ヲ復タ奚ヲカ疑ハン。(夫の天命を樂しみて復た奚をか疑はん。) ★「何爲(奚爲・胡爲)〜」 なんスレゾ〜ン(ヤ)(讀み)、どうして〜しようか(いや、〜しない)(意味) 主人何爲スレゾ言ハン(レ)少シト(レ)錢。(主人何爲すれぞ錢少しと言はん。) ★「何以〜」 なにヲもっテ〜ン(ヤ)(讀み)、どうして〜しようか(いや、〜しない)(意味) 不ンバ(レ)然ラ籍何ヲ以テ至ラン(レ)此ニ。(然らずんば籍何を以て此に至らん。) ★「誰(孰)〜」 たれカ〜ン(ヤ)(讀み)、だれが〜しようか(いや、だれも〜しない)(意味)。 人ハ非(二)ザレバ聖人(一)ニ誰カ無カランヤ(レ)過。(人は聖人に非ざれば誰か過無からんや。) 君ニシテ而知ラバ(レ)禮ヲ孰カ不ラン(レ)知ラ(レ)禮ヲ。(君にして禮を知らば孰か禮を知らざらん。) ★「豈〜」 あニ〜ン(ヤ)(讀み)、どうして〜しようか(いや、〜しない)(意味)。 豈ニ無(三)カランヤ山歌ト與(二)村笛(一)。(豈に山歌と村笛と無からんや。) ★「如何(若何・奈何)〜」 いかんゾ〜ン(ヤ)・〜ヲいかんセン(讀み)、どうして〜しようか(いや、〜しない)・〜をどうしようか(いや、〜しない)(意味) 對シテ(レ)此ニ如何ゾ不(二)ラン涙垂(一)レ。(此に對して如何ぞ涙垂れざらん) *手段や方法を問うため、目的語を伴う事が有りますが、其の時は目的語を「如」と「何」の間に挿入し、「如」と「何」が離れていても、此の二字で「いかん」と讀みます。 桓魋其レ如(レ)予ヲ何セン。(桓魋其れ予を如何せん。) ★「乎(也・哉・耶・邪・與・也耶・也哉・乎哉・乎邪・乎耶)、等」 〜ンや(讀み)、どうして〜だろうか(いや〜だ)(意味) 父死シテ不(レ)葬ラ奚ニ及(二)ブ干戈(一)ニ、可ケン(レ)謂フ(レ)孝ト乎。(父死して葬らず奚に干戈に及ぶ、孝と謂ふ可けんや) 其ケ可ケン(レ)逆ラフ(レ)天ニ乎。(其れ天に逆らふ可けんや。) 嗚呼可ケン(レ)不ル(レ)懼レ哉。(嗚呼懼れざる可けんや。) 爲スハ(レ)仁ヲ由ル(レ)己ニ、而シテ由ラン(レ)人ニ乎哉。(仁を爲すは己に由る、而して人に由らんや。) ★「何〜乎・安〜乎・孰〜乎・胡〜也・豈〜哉・何爲〜也・奚以〜也・如何〜乎・獨〜乎、等」 なんゾ〜ンや・いずクンゾ〜ンや・あニ〜ンや・なんすレゾ〜ンや・いかんゾ〜ンや・ひとリ〜ンや(讀み)、どうして〜だろうか(いや〜だ)(意味) 何ゾ足ラン(レ)算フルニ乎。(何ぞ算ふるに足らんや。) 燕雀安クンゾ知(二)ラン鴻鵠之志(一)ヨ哉。(燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや。) 吾豈ニ苟クモセン哉。(吾豈に苟くもせんや。) 何爲レゾ其レ莫カラン(レ)知ルコト(レ)子ヲ也。(何爲れぞ其れ子を知ること莫からんや。) 奈何ゾ憂(二)ヘン崩墜(一)ヲ乎。(奈何ぞ崩墜を憂へんや。) *「獨」の場合は一般的に「ひとリ」と讀みますが、此は「一人」の意味の「ひとり」では無く、疑問詞としての「どうして」の意味であり、疑問詞の「寧(なんゾ)」と同様に使われています。因って「なんゾ」と讀んでも誤りでは有りません。 籍獨リ不ラン(レ)愧(二)ヂ於心(一)ニ乎。(籍獨り心に愧ぢざらんや。) 籍獨ゾ不ラン(レ)愧(二)ヂ於心(一)ニ乎。(籍獨ぞ心に愧ぢざらんや。) 相如雖モ(レ)駑ナリト獨リ畏(二)レン愧廉將軍(一)ヲ哉。(相如駑なりと雖も獨り廉將軍を畏れんや。) 相如雖モ(レ)駑ナリト獨ゾ畏(二)レン愧廉將軍(一)ヲ哉。(相如駑なりと雖も獨ぞ廉將軍を畏れんや。) ★「敢(肯)〜・敢(肯)不〜」 あへテ〜ン(ヤ)・あへテ〜ざラン(ヤ)(讀み)、どうして〜しようか(いや、〜しない)・どうして〜しないだろうか(いや、〜する)(意味) 長者雖モ(レ)有リト(レ)問フコト、役夫敢テ伸ベンヤ(レ)恨ヲ。(長者問ふこと有りと雖も、役夫敢て恨を伸べんや。) 肯テ將(二)テ衰朽(一)ヲ惜(二)マンヤ殘年(一)ヲ。(肯て衰朽を將て殘年を惜まんや。) 愈 敢テ不ランヤ(レ)吐(二)カ情實(一)ヲ。(愈 敢て走情實を吐かざらんや。) ○願望形の種類 願望形とは、「願いや望みの意味を表す」語法で、大きく分けて「四種類」が有ります。基本的に文末は推量の「ン」や命令の「セヨ」などで結びます。 @動詞を用いるもの。 A願望を表す副詞を用いるもの。 B「庶幾」(こいねがはくは)を用いるもの。 C「安得」を用いるもの。 以下、此等を順次説明致します。 ★「欲〜」 〜(センコト)ヲほっス(讀み・・一般的に、體言から返る時は「ヲ」と、用言から返る時は「センコトヲ」と、送り假名を付けます。)、〜を望む、〜したい、〜でありたいものである(意味) 胆ハ欲シテ(レ)大ヲ而心ハ欲ス(レ)小ヲ。(胆は大を欲して心は小を欲す。) 君子ハ欲(下)ス訥(二)ニシテ於言(一)ニ而敏(中)ナランコトヲ於行(上)ニ。(君子は言に訥にして行に敏ならんことを欲す。) ★「得〜」 〜(スル)ヲえン(讀み)、ぜひ〜したい、〜したいと望む、〜を手に入れたい(意味) 先生視(二)セ可ナル者(一)ヲ、得(二)ン身ラ事(一)フルヲ(レ)之ニ。(先生可なる者を視せ、身ら之に事ふるを得ん。) 得(下)ン以(二)テ頸血(一)ヲ濺(中)グヲ大王(上)ニ。(頸血を以て大王に濺ぐを得ん。) ★「希〜」 〜(センコト)ヲねがフ(讀み)、ぜひ〜したい、どうか〜したい、〜したいと望む、〜を手に入れたい(意味) 賢ハ希ヒ(レ)聖ヲ、士ハ希フ(レ)賢ヲ。(賢は聖を希ひ、士は賢を希ふ。) ★「冀〜」 〜(センコト)ヲこいねがフ(讀み)、ぜひ〜したい、どうか〜したい、〜したいと望む、〜を手に入れたい(意味) 冀(二)フ復タ得(一)ンコトヲ(レ)兔ヲ。(復た兔を得んことを冀ふ。) ★「請〜」 こフ(ラクハ)〜セン(セヨ)(讀み・・〜(センコト)ヲこフと、下から返って讀む時は、動詞として用いられています。)、〜を願う、〜を求める、〜しよう、〜して下さい(意味) 王好ム(レ)戰ヲ、請フ以テ(レ)戰ヲ喩ヘン。(王戰を好む、請ふ戰を以て喩へん。) 相如復タ請(二)ヒ秦王(一)ニ撃チ(レ)缶ヲ爲(二)サシム秦聲(一)ヲ。(相如復た秦王に請ひ缶を撃ち秦聲を爲さしむ。) ★「願〜」 ねがハクハ〜セン(セヨ)(讀み・・〜(センコト)ヲねがフと、下から返って讀む時は、動詞として用いられています。)、〜を願う、〜を求める、どうか〜して下さい、ぜひ〜したい(意味) 願ハクハ陛下親シミ(レ)之ニ信ゼヨ(レ)之ヲ。(願はくは陛下之に親しみ之を信ぜよ。) 相如願(二)フ奉ジテ(レ)璧ヲ往(一)カンコトヲ。(相如璧を奉じて往かんことを願ふ。) ★「庶幾〜」 こいねがハクハ〜セン(セヨ)(讀み)、ぜひ〜したい、どうか〜したい、どうか〜して下さい(意味) 庶幾ハクハ倚(二)リ君ノ威霊(一)ニ席(二)卷シ明國(一)ヲ、合(二)シテ三國(一)ヲ爲サン(レ)一ト。(庶幾はくは君の威霊に倚り明國を席卷し、三國を合して一と爲さん。) 王庶幾ハクハ改メヨ(レ)之ヲ。(王庶幾はくは之を改めよ。) ★「安得〜」 いずクンゾ〜スルヲえン(讀み)、どうにかして〜したいものだ(意味) 安クンゾ得(下)ン類(二)シテ古人(一)ニ千載列(中)スルヲ史(上)ニ。(安くんぞ古人に類して千載史に列するを得ん。) ★「安得〜、〜」 いずクニカ〜ヲえテ、〜セン(メン)(讀み)、どこかで〜を手に入れて〜したいものだ(しよう)(意味) 安クニカ得(二)テ猛士(一)ヲ兮守(二)ラシメン四方(一)ヲ。(安くにか猛士を得て四方を守らしめん。) ○推量形の種類 推量形とは、「物事を推し量る意味を表す」語法で、大きく分けて「三種類」が有ります。基本的に文末は推量の「ン」で結びます。 @推量を表す副詞を用いるもの。 A「庶幾」(ちかからん)を用いるもの。 B再讀文字を用いるもの。 以下、此等を順次説明致します。 ★「蓋〜」 けだシ〜ナラン(ナリ・ス)(讀み)、恐らく(思うに・多分・だいたい・大方)〜であろう(である)(意味) 義貞之計モ、蓋シ亦タ出デン(レ)此ニ。(義貞の計も、蓋し亦た此に出でん。) 蓋シ追(二)ヒ先帝之殊ヲ遇(一)欲セバ(レ)報(二)イント之ヲ陛下(一)ニ也。(蓋し先帝の殊遇を追ひ之を陛下に報いんと欲せばなり。) ★「或〜」 あるイハ〜ナラン(ス)(讀み)、もしかすると(ことによったら・時には)〜かもしれない(のことがある)(意味) 或イハ足(二)ラン以テ自ラ敗(一)ルルニ。(或いは以て自ら敗るるに足らん。) 一食ニ或イハ盡(二)クス粟一石(一)ヲ。(一食に或いは粟一石を盡くす。) ★「率(類)〜」 おほむネ〜ナリ(ス)(讀み)、大概(大方・多分・だいたい)〜である(している)(意味) 今人率ネ口ニ説(二)ク多忙(一)ヲ。(今人率ね口に多忙を説く。) 自(二)リ六朝(一)迄(二)ルマデ于南唐(一)ニ、類ネ皆偏(二)據ス一方(一)ニ。(六朝より南唐に迄るまで、類ね皆一方に偏據す。) ★「恐〜」 おそラクハ〜ナラン(讀み)、多分(事に因ったら)〜であろう(かも知れない)(意味) 恐ラクハ不ラン(レ)堪ヘ(レ)事ニ。(恐らくは事に堪へざらん。) ★「疑〜」 うたがフラクハ〜カト(讀み)、〜かと思われる、〜と疑われる(意味) 疑フラクハ是レ地上ノ霜カト。(疑ふらくは是れ地上の霜かと。) ★「惜〜」 おシムラクハ〜ヲ(讀み)、惜しいことには〜と言うことだ、〜と言うことは惜しいことだ(意味) 惜シムラクハ未ダ・ルヲ(レ)知(ニ)ラ兵法(一)ヲ。(惜しむらくは未だ兵法を知らざるを。) ★「恨〜」 うらムラクハ〜ヲ(讀み)、恨めしいことには〜と言うことだ、〜と言うことは恨めしいことだ(意味) 恨ムラクハ不(三)ルヲ移シテ(レ)封ヲ向(二)カハ酒泉(一)ニ。(恨むらくは封を移して酒泉に向かはざるを。) ★「庶幾〜」 (スル)ニちかカラン(讀み)、多分(恐らく)〜であろう(意味) 庶(二)幾カラン可(一)キニ(レ)比(二)ス我ガ梅溪(一)ニ歟。(我が梅溪に比す可きに庶幾からんか。) ★「〜庶幾乎(哉)」 〜ちかカランカ(カナ)(讀み)、多分(恐らく・実に)〜であろう(に近い)(意味) 王之好ムコト(レ)樂ヲ甚ダシケレバ、則チ齊國ハ其レ庶幾カラン乎。(王の樂を好むこと甚だしければ、則ち齊國は其れ庶幾からんか。) ★「將(且)〜」 まさにニ〜ントス(讀み)、今にも(やがて・これから)〜しようとする(しそうだ・となろうとする)(意味) 人之將ニ・ルヤ(レ)死セント、其ノ言也善シ。(人の將に死せんとするや、其の言や善し。) 引キ(レ)酒ヲ且ニ・(レ)飲ント(レ)之ヲ。(酒を引き且に之を飲まんとす。) 中國の文獻を見ると、年齢を數字ではなく、別の言葉で表現(雅稱)される事が多々有ります。其の代表的なものを簡單に説明します。 孩提・・・二〜三歳の子供。(『孟子』の「孩提の童」に因る) 就傅・・・男子の十歳。(『禮記』の「十年にして出でて外傅に就く」に因る) 誦詩・・・男子の十三歳。(『禮記』の「十有三年にして樂を學び詩を誦し勺を舞ふ」に因る) 志學・・・十五歳。(『論語』の「吾十有五にして學に志す」に因る) 笄年・・・女子の十五歳。(『禮記』の「十有五にして笄す」に因る) 弱冠・・・男子の二十歳。(『禮記』の「二十を弱と曰ひ冠す」に因る) 而立・・・三十歳。(『論語』の「三十にして立つ」に因る) 有室・・・男子の三十歳。(『禮記』の「三十を壯と曰ひ室有り」に因る) 不惑・・・四十歳。(『論語』の「四十にして惑はず」に因る) 始仕・・・男子の四十歳。(『禮記』の「四十にして始めて仕ふ」に因る) 知命・・・五十歳。(『論語』の「五十にして天命を知る」に因る) 耳順・・・六十歳。(『論語』の「六十にして耳順ふ」に因る) 還暦・・・六十一歳。(干支が一回りした事に因る) 從心・・・七十歳。(『論語』の「七十にして心の欲する所に從ふ」に因る) 致事(致仕)・・・男子の七十歳。(『禮記』の「七十にして事を致す」に因る) 古稀・・・七十歳。(杜甫の「人生七十、古來稀なり」に因る) 八秩・・・八十歳。(『芥隠算記』の「年八十、日に秩有り」に因る) 九秩・・・九十歳。(『禮記』の「九十にして日に秩有り」に因る) 尚、喜寿(77歳)・傘寿(80歳)・米寿(88歳)・卒寿(90歳)・白寿(99歳)等の表記は、日本独自の表現です。 |