漢文訓讀の色葉

〜授業用備忘録〜


     目 次      

  1、訓読って何

   2、返り点の用法と種類

   3、送り仮名のきまり

   4、書き(読み)下し文のきまり

   5、訓読上に於ける特殊な読み方の漢字

  6、漢文の基本型について

  7、熟語の基本型について

   8、漢和辞書の引き方

    9、否定型の代表的パターン

  10、使役型の代表的パターン

  11、受け身型の代表的パターン 

《以下に提示する横書きの例文は、便宜的に返り点を括弧で、送り仮名をカタカナで、示してあります。》

 訓読って何

 ここでは、漢文を読む(訓読)ための、基本的な色葉(知識)を説明します。「訓読」とは、結論から言えば「解釈」です。以下そのことを具体的に説明します。

 「訓読」とは、日本語とは語順の異なる漢文(古典中国語)を、漢文の原型を変えずに符号を付けて、日本語の語順となるように翻訳する作業です。故に「訓読」とは「解釈」なのですが、この翻訳は、現代語ではなく文語文への解釈であるため、現在では更に現代語訳が必要になってくるのです。

*白文

 「白文」とは、何も手を加えない元のままの「原文」のことであり、例えば、

 子曰学而時習之不亦説乎有朋自遠方来不亦楽乎人不知而不慍不亦君子乎

のような文のことです。

*句点文

 「句点文」とは、文章のセンテンスに合わせて「、」(読点)「。」(句点)及び「・」(並列点)「句読点」を加えた文章のことで、例えば、

 子曰、学而時習之、不亦説乎。有朋自遠方来、不亦楽乎。人不知而不慍、不亦君子乎。

のような文のことです。

*尚、最近「標点本」と言う言葉をよく耳にしますが、これは一九五〇年代頃から中国で出版された書籍で、「,」「、」の句読点や「?」「!」の符号、及び固有名詞に「傍線」や「波線」を付した本のことで、訓読に関わる名称ではありません。

*訓読文

 「訓読文」とは、白文である漢文に、日本文の語順を示す「返り点(符号)」(漢字の左横下に付ける。後に詳しく説明します)や、「送り仮名(カタカナ)」(漢字の右横下に付ける。後に詳しく説明します)、及び文章のセンテンスを示す「句読点」を加えた文章のことで、例えば、

 子曰、学ビテ而時フ(レ)、不(二)(一)バシカラ。有(下)リ朋自(二)遠方(一)(上)タル、不(二)(一)シカラ乎。人不シテ(レ)而不(レ)、不(二)君子(一)ナラ

のような文のことです。

*書き(読み)下し文

 「書き(読み)下し文」(後に詳しく説明します)とは、訓読文の返り点や句読点に従い、送り仮名のカタカナ平仮名で表記した文章のことで、例えば、

 子曰く、学びて時に之を習ふ、亦た説ばしからずや。朋遠方より来たる有り、亦た楽しからずや。人知らずして慍みず、亦た君子ならずやと。

のような文のことです。

*音読

 「音読」とは、「訓読」に対する「音読」と、「黙読」に対する「音読」との二種類の意味が有ります。先ず「訓読」に対する「音読」とは、「訓読」が日本文の語順に置き換える「翻訳」作業であるのに対して、「音読」は原文の語順通り現代中国語で発音して読んでゆく行為で、これは解釈ではなく中国語での「読み」です。次ぎに、「黙読」に対する「音読」ですが、これは声を出さずに目だけで読む行為の「黙読」に対して、声を出して読んで行く行為が「音読」です。漢文の訓読であれ中国語での読みであれ、この「音読(声を出して読む)」することが非常に重要な行為となります。

 なぜなら、訓読自体が文語文への翻訳作業であるため、その訓読文を声を出して読むと言う行為は、文語文の文章としてのリズムを、また中国語での発音であれば、中国語としての文章のセンテンスを、自分の口で発して、そのリズムを自分の耳で確認すると言う行為なのです。文章にはそれぞれのリズムと言うものが有ります。その様なわけで、文語文で読む「訓読」であれ、中国語で発音する「音読」であれ、「声を出して読む」と言う「音読」が、文章を理解する上で非常に重要な行為となってくるのです。

 以上のことを要約すれば、日本語の文章は、「私は漢文を学ぶ」の如く、「主語+目的語+述語」の語順になっていますが、漢文では、「我学漢文」で「主語+述語+目的語」の語順になっています。この漢文に、送り仮名(カタカナ)と返り点(符号)を付けて、日本文の語順になるようにする作業が「訓読」であり、その訓読の返り点(符号)に従い、送り仮名(カタカナ)を平仮名にして、書き表した文章が「書き(読み)下し文」と呼ばれる文章です。

一例を挙げれば、

白文(原文) 

 我學漢文 

訓読文

 我學(二)ブ漢文(一)ヲ

書き(読み)下し文

 我漢文を學ぶ。

現代語訳

 私は漢文を学びます。

となります。

*なぜ訓読を学ぶのか

 「なぜ訓読を学ぶのか」、この問題は、中国古典学を学ぶ上で重要な問題だと思います。「漢文(中国古典文)と雖も、中国文である以上、中国語で読めば良い」との意見が有るのも事実です。果たしてそれで良いのでしょうか。

 確かに漢文が日本に伝来した当初は、中国音で読み、それから日本語に訳していたようですが、すぐさま符号やカタカナを用いて表記し、原文の形をそのまま日本文として解釈する方法が考え出され、その方法は、平安時代から室町・江戸と変化を遂げ、最終的には明治四十五年三月二十九日に公示された、当時の漢学者達に因って策定された、文部省の「漢文教授に関する調査報告」の『官報』に依拠したものが、現在行われている「訓読法」です。

 中国語で読むと言う行為は、確かに中国語辞典で発音を調べながら読んでゆくことが出来ますが、では「その意味」は、と考えた時、漢和辞典(この時、中国で出版された中国語の古語辞典ないしは文語辞典を直接見て、すぐさま古典的意味が理解出来る人は、中国語で中国古典を学ぶ修練を、相当に積んだ人たちです)を引きながら意味を考えてゆくことになります。

 この場合、古典と現代文とでは、文法も漢字の意味も異なるため、中国語辞典ではなく、漢和辞典を引くことになります。つまり、中国語で読むと言う行為は、あくまで「読み」であって「解釈」ではなく、「解釈」の時には、別の要素が必要になってくるのです。

 訓読で理解すると言う行為は、既に述べた如く「解釈」すると言うことです。例えその解釈が、現在では馴染みの薄い文語文であったにしても、可能な限り原文の漢字を残した全文通釈(中国に於いても、古典の全文通釈が行われたのは、ほんの数十年前からで、それまでは語釈が中心です)を、瞬時に行うと言うことです。日本では、その全文通釈(不完全な部分が無い訳ではありませんが)を、平安朝以来行って来ているのです。

 外国の文章を日本語に翻訳した時、その原文は、翻訳された日本語の中には殆ど残りませんが、訓読で解釈すれば、文語文であっても逆に原漢字は殆ど残ります。翻訳と言う作業に於いて、原文が殆ど残ると言う方法は、希有な例と言えるでしょう。

 訓読と言う方法は、平安朝以来の日本人が、中国古典文の原型を保ちつつ、同時に如何なる内容であるかを理解するための方法として、営々として努力を重ね叡智を集めて考え出した、中国古典解釈のための方法・技術なのです。

 例えば、我々日本人は日常的に日本語を使っていますが、だからと言って、日本の古典である『伊勢物語』や『源氏物語』を原文で読んで、すぐに意味が理解されるでしょうか。やはり大学などで日本古典学を専攻して、初めて理解されるようになるのではないでしょうか。

 とすれば、中国古典も同じではないでしょうか。中国語を中国の人と同じようにマスターし、更に中国語で中国の古典学を専門的に学び、そこで初めて中国語で読んでも瞬時に古典的意味が分かるようになるはずです。中国語と中国語に因る中国古典学とを、同時に操れるようになるには、大変な努力と時間を必要とします。

 しかし、訓読法は、その努力と時間を過去の日本人達が費やして確定させてくれた、中国古典を解釈するための方法なのです。平安朝以来の日本人が、漢詩や漢文を多数作っていますが(これらは、日本漢文と称しています)、二〜三の例外を除いては、その大半が当時の中国語や中国語の古典的文法をマスターして作っている訳ではありません。彼等は、漢文の訓読文から復文(訓読文から原文に復す行為)すると言う思考で、作っているのです。

 例えば、一例を挙げますと

 今朝ベッドから起きて窓の外を見たら、霧雨が立ちこめまるで煙の幕のようでした。

と言う現代語を、漢文訓読調で表しますと、

 今朝床を起ちて窓外を見るに、雨霧濛々として煙幕の如きなり。

となりますが、この漢文訓読から復文しますと、

 今朝起床而見窓外、雨霧濛濛如煙幕也。

となり、所謂漢文が出来上がります。

 これはあくまで、当時の日本人が漢文を作る時の思考パターンを理解して頂くための例文に過ぎません。しかし、大半の日本人が、この様な思考で漢文を作っていたのは事実です。

 要するに、「漢文訓読法」とは、日本人が中国古典文を解釈理解するために編み出した、日本人としての「方法・技術」であり「叡智」であり、同時に過去の日本人が、どのようにして中国古典文を理解しようとして来たかの「遺産」でもあるのです。

 この様な意味に於いて、日本人が日本で中国の古典文を学ぶ時、「訓読」と言う方法を学ぶと言うことは、単に中国古典文を理解するための方法を学ぶと言うことだけではなく、日本人の思考や日本の文語文を理解する上でも、大きな意味と意義を持っていると考えます。と同時に現代では、中国古典を理解する上で、たんに「訓読法」だけではなく、中国語やその文法などの修得が必要であることは、今更多言を要するまでも無いことでしょう。

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 返り点の用法と種類

 返り点の付け方」には「原則」が有り、レ点とそれ以外では大きく異なります。

一、一字から一字に返る「レ点」は、返る前の字の左上に付けること。

二、間を飛ばして返る一・二点等は、返る字の左下に付けること。

 「登山」(山に登る)であれば、「山」字の左上にレ点を付けます。

 *「見富士山」(富士山を見る)であれば、「見」字の左下に二点、「山」字の左下に一点を付けます。

 *「我欲不爲兒孫買美田而欲爲妻残家屋」(我兒孫の爲に美田を買はざるを欲して妻の爲に家屋を残すを欲す)であれば、「不」字の左上にレ点、「不」字の左下に下点、「爲」字の左下に二点、「孫」字の左下に一点、「買」字の左下に中点、「田」字の左下に上点、「欲」字の左下に三点、「妻」字の左上にレ点、「残」字の左下に二点、「屋」字の左下に一点、と言う具合です。

 返り点」は、現在「五種類」が有り、それぞれ用法が異なりますが、文章の内容や長短に応じて、適宜組み合わさって使用されるものと、理解して下さい。以下、その説明を致します。

*レ点(かりがね点とも呼ばれる)

 下の一字からすぐ上の一字に返って読むための符号です。一字から一字に返る符号である以上、漢字が二字有れば、何処にでも登場する可能性が有ります。

 自リ(レ)古皆有リ(レ)死。 (古より皆死有り。)

*一・二点(一・二・三・四・・・)

 二字以上を隔てて下から上に返って読むための符号です。必要に応じて一・二・三と数字が増えてゆきます。

 (二)リ伯楽(一)、然後有(二)リ千里(一)(世に伯楽有り、然る後千里の馬有り。)

*上・中・下点

 レ点や一・二点だけでは示しきれず、一・二点の外側から更に上に返って読むための符号です。返る字が二ヶ所の場合は、下から上・中・下と用いますが、一ヶ所の場合は、中を省略して上・下と用います。

 (下)(二)ニ児孫(一)ノ(中)ハ美田(上)ヲ(児孫の爲に美田を買はず。)

*甲・乙点(甲・乙・丙・丁・・・)

 レ点や一・二点、上・下点だけでは示しきれず、上・下点の外側から更に上に返って読むための符号です。必要に応じて甲・乙・丙・丁と増えてゆきます。また特殊な例ですが、一・二点の外側に三ヶ所以上帰る字が有る場合は、三つしか符号を持たない上・中・下点では、返りきることが出来なくなり、その時は、上・下点を飛ばして、一・二点の外側にいきなり甲・乙点を付けます。

 (丁)ル陛下不(丙)ルヲ(二)ヒテ於仏(一)ニ(二)シ崇奉(一)ヲ(乙)ラ福祥(甲)ヲ(必ず陛下仏に惑ひて此の崇奉を作し以て福祥を祈らざるを知る。)

*天・地・人点

 レ点や一・二点、上・下点、甲・乙点だけでは示しきれず、甲・乙点の外側から更に上に返って読むための符号です。返る字が二ヶ所の場合は、下から天・地・人と用いますが、一ヶ所の場合は、地を省略して天・人と用います。但し、実際の文章の中では、殆ど使用されません。

*レ点と他の返り点との併用

 レ点と一点、レ点と上点、レ点と甲点、レ点と天点の併用が有ります。

 (二)ル(一)ヲ(レ)矛。(盾と矛とを賣る。)

 (下)フ(二)テ十五城(一)ヲ(上)ヘンコトヲ(レ)(十五城を以て之に易へんことを請ふ。)

*下から連続した二字(熟語)に返る場合

 下から連続した二字(熟語)に返って読む場合は、二字の間にハイフン()を用い、その中間に返り点を付けます。但し、ハイフンを引かない場合も多々有るので、用語に注意を払って下さい。

 撃(二)沛公(一)ヲ(沛公の軍を撃破す。)

*重要なことは、レ点とそれ以外とでは性格が異なると言うことです。レ点は一字から一字へ返る符号であれば、漢字が二字有れば使用できるので、何処でも使われる可能性が有りますが、一・二点以後は異なります。一・二点の外側に出てくるのが上・下点で、その外側に出てくるのが甲・乙点で、更にその外側に出てくるのが天・人点です。これらは決して交錯して使用されることはありません。つまり「 」の外に( )が有り、その外に〈 〉が有り、さらに外側に[ ]が有ると言う、[ 〈 ( 「 」 ) 〉 ]の形式です。

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 送り仮名のきまり

 「送り仮名」は、原則として活用語(動詞・形容詞・形容動詞・助動詞)の活用語尾や、助詞などを示す言葉を、送り仮名として付けますが、次の三点が重要なきまりです。

一、歴史的仮名遣い、つまり文語文法に従うこと。

二、漢字の右横下にカタカナで付けること。

三、再読文字の場合は、最初漢字の右横下に、二 回目に読むときは漢字の左横下にカタカナで 付けること。

*活用語(動詞・形容詞・形容動詞・助動詞)は活用語尾を送ります。

 登・聞・清・可・勿カレ 

形容詞・副詞などから転じた動詞や、動詞・副詞から転じた形容詞は、もとの品詞の活用語尾から送ります。

 輝カス・驚カス・行ハル・以テス・極メテ 

*副詞・接続詞・前置詞は、最後の一字を送ります。

 若・能・殆・乃・遂・自 

*活用語を含む副詞・接続詞は活用語尾を送り ます。

 尽クハ・必ズシモ・然レドモ・而シテ 

*名詞を動詞に転じて読むときには、動詞に読む部分から送ります。

 王トス・指サス・暇アリ・西・雨フル・杖ツク・城ヅク 

*「レ」を伴う人称代名詞(我・彼・誰)には送 りませんが、「ガ」を伴う人称代名詞や、「ノ」 「レ」を伴う指示代名詞には送ります。

 我・是・其・此・夫・孰・何 

*形容動詞の連用中止形には「ニシテ・トシテ」(一般的に「・・・であって」と訳せるような場合が「ニシテ」 で、「・・・としていて」と訳せるような場合が「トシテ」です)を送り、終止形には「ナリ・タリ」(一般的に「・・ ・だ」とか「・・・である」と訳せるような場合が「ナリ」で、「・・・としている」と訳せるような場合が「タリ」です)を送ります。

 花彩 鮮明ニシテ、草色 青青タリ

 古松 鬱蒼トシテ、微風 暖カナリ

*名詞を副詞に転じて読むときには、次のような送り仮名を送ります。

 兄ノゴトク・学モテ・西ノカタ 

*引用文や対話などの終わりには、「ト」を送ります。

 子曰、巧言令色、鮮矣仁

*音を重ねて読む時の字には、踊り字を送ります。

 各(おのおの)・益(ますます)・偶(たまたま)・愈(いよいよ)・数(しばしば)・看(みすみす)

*動詞が名詞に転じたときには、何も送りません。名詞は一字で名詞です。

 始(はじめ)・終(おわり)・流(ながれ)・祭(まつり)

*次ぎのような字には、送り仮名を送りません。

 今(いま)・昔(むかし)・古(いにしえ)・又(また)

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 書き(読み)下し文のきまり

 「書き下し文」とは、訓読した漢文をその「訓読通りに文章化」したもののことですが、次の三点が重要なきまりです。

一、送り仮名のカタカナは全て平仮名で表わすこと。

二、訓読しない漢字は、書き下し文には表さないこと。

三、原文の漢字は原則としてそのまま使用するが、次ぎに挙げる漢字は平仮名で表すこと。(文語文法の助詞・助動詞に当るものは平仮名にする、と言うのが基本です)

@再読文字で、二度目に読む部分。

A「者」を「は」と読む場合。

B「之」を「の」と読む場合。

C「與」を「と」と接続に読む場合。

D「與」を「よリハ」と比較に読む場合。

E「ず」と読む、打ち消しの「不・弗」の字。

F「よリ」と読む、起点を示す「自・從・由」の字。

G「なり・や・か・かな・のみ」などと読む、終尾詞として使われた時の「也・乎・矣・焉・與 ・歟・耶・邪・哉・夫・已・耳・爾・而已・也已・已矣・而已矣」などの字。

H「る・らル」と読む、受身として使われた時の「被・見・爲・所」の字。

I「しム」と読む、使役として使われた時の「使・令・教・遣・俾」の字。

 子未ダ・ル(レ)バ(レ)乎。(子未だ禮を學ばざるか。)

 蓬生(二)ズレバ麻中(一)ニシテレ)而直( 蓬麻中に生ずれば扶けずして直し。)

 天帝使(三)ムヲシテ(ニ)タラ百獸(一)ニ(天帝我をして百獸に長たらしむ。)

 信ニシテ而見(レ)、忠ニシテ而被(レ)(信にして疑はれ、忠にして謗らる。)

 先生之恩(二)(一)ナラ(先生の恩は啻に此れのみならず。)

*復文について

 「復文」とは、書き下し文から「元の原文(白文)に復元」する、つまり、日本語の文語文から語順の異なる漢文にすることです。

 名を後世に揚ぐ。(「於」を使って五字で)→揚名於後世。

 張良、漢王に書を遺る。(六字で)→張良、遺漢王書。

 其の路を舎てて由らず。(「而と弗」を使って六字で)→舎其路而弗由。

 未だ治めずして國人其の仁を信ずるなり。(「而と也」を使って九字で)→未治而國人信其仁也。

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 訓読上に於ける特殊な読み方の漢字

*再読文字

 「再読文字」とは、漢文の訓読上において、「二度読む漢字」のことで、副詞的な意味と、助動詞或いは動詞的意味とを、兼ね備えて持っている漢字のことです。

 この漢字は、先に副詞的に読み、二度目は返り点に従って助動詞或いは動詞的に読みます。因って、再読文字には必ず返り点が付きますが、だからと言って、返り点が付いていれば常に再読文字と言う訳ではなく、単に動詞として使われる場合も多々有りますので、注意が必要です。

 要するに、意味上から再読文字として使用されていると判断される時には、再読文字として読むと言うことです。再読文字として使用される漢字は、代表的なものが、七種十字あります。以下にそれらを説明しますが、数が少ないので、その読み方と意味は、出来れば覚え込んで暗記しましょう。

@「未」

 いまダ・・ず(読み)・まだ・・しない。まだ・・でない。(意味)

 未(二)ダ敗北(一)セ(未だ嘗て敗北せず。)

A「將」「且」

 まさニ・・す(読み)・いまにも・・しようとする。やがて・・になろうとする。(意味)

*この場合、再読文字に返る前の述語の送り仮名は、活用語尾の後に必ず「ント」が付きます。

 不(レ)(二)ラ老之將(一)ニ・ルヲ(レ)ラント(老の將に至らんとするを知らず。)

 引キテ(レ)ニ(レ)マント(レ)(酒を引きて且に之を飮まんとす。)

B「當」「應」

 まさニ・・べシ(読み)・当然・・のはずだ。きっと・・だろう。(意味)

 人當ニ・シ(レ)(二)シム寸陰(一)ヲ(人當に寸陰を惜しむべし。) 

 君應ニ・シ(レ)(二)ル故ク(一)ヲ(君應に故クの事を知るべし。)

C「猶」「由」

 なホ・・ごとシ(読み)・ちょうど・・と同じである。どうやら・・のようだ。(意味)

 過ギタルハホ・シ(レ)ルガ(レ)(過ぎたるは猶ほ及ばざるがごとし。)

 稷(下)フ天下(二)ラバタル(一)、由(中)ホ・シト(上)ヘシムルガ(レ)(稷は天下に飢たる者有らば、由ほ己の之を飢へしむるがごとしと思ふ 。)

D「宜」

 よろシク・・ベシ(読み)・・・するほうがよい。・・がふさわしい。(意味)

 過テバシク・シ(レ)ム(レ)(過てば則ち宜しく之を改むべし。)

E「須」

 すべかラク・・べシ(読み)・ぜひとも・・する必要がある。必ず・・しなくてはならない。(意味)

 行樂須ラク・シ(レ)ブ(レ)(行樂須らく春に及ぶべし。)

F「盍」

 なんゾ・・ざル(読み)・どうして・・しないのか。なぜ・・しない のか。(意味)

*「盍」の音は「コウ(カフ)」で、「何不」の合音の字です。

 王欲セバ(レ)ハント(レ)ゾ・ル(レ)(二)ラ(一)ニ矣。(王之を行はんと欲せば則ち盍ぞ其の本に反らざる。)

*置き字(於・于・乎)の使われ方

 「置き字」とは、「補語の前に置かれる前置詞」で、補語からその前置詞の上に置かれる述語に返るとき、「訓読しない字」のことです。但し、これらの字は、置き字として使用されているときに、訓読しないと言うだけで、それ以外の場合は訓読します。

 「置き字」として使用される字は、「於・于・乎」の三字が有りますが、この三字は、全く同様に用いられ、場所・方向・起点・原因・比較などを表すときに用いられますので、置き字の下の補語には、「ニ・ヨリ・ヨリモ」などの送り仮名を付けます。

 青(二)リテ於藍(一)ヨリ而青(二)シ於藍(一)ヨリモ(青は之を藍より取りて藍よりも青し。)・・置き字として使用された場合

 向(二)イテ京師(一)ニクコト(レ)一年餘ナリ(向に京師に於いて教を聽くこと一年餘なり。)・・読む場合

*接続詞(而)の使われ方

 「而」が接続詞として使用されたときには(たまに「なんぢ」「すなはチ」・「ごとシ」と読まれる場合が有りますので、注意してください)、「順接と逆接」の二種類が有ります。

@順接・・「テ」「しかシテ」「しかウシテ」(読み) 「そして」「それで」「そうして」(意味) 

 但し、文章が連続しているときには、「而」に続く上の字に、送り仮名として「テ」「シテ」を送り、「而」の字は読みません。

 光陰者百代過客也。而シテ浮生シ(レ)(光陰は百代の過客なり。而して浮生は夢の如し。)・・読む場合

 謀リテ(レ)而更困窮(事を謀りて更に困窮す。)・・読まない場合

A逆接・・「しかモ」「しかルニ」「しかルヲ」「し かレドモ」 (読み)「そのうえに」「それなのに」「そうではあるが」「そうはいっても」(意味)

 但し、文章が連続しているときには、「而」に続く上の字に、送り仮名として「モ」「ルニ」「ルヲ」「レドモ」を送り、「而」の字は読みません。

 道リ(レ)キニ。而ルニ(二)ム(一)キニ(道は爾きに在り。而るに諸を遠きに求む。)・・読む場合

 心不レバ(レ)ラ(レ)、視レドモ而不(レ)、聽ケドモ而不(レ)コヘ(心焉に在らざれば、視れども見へず、聽けども聞こへず。)・・読まない場合

*「すなはチ」と読む接続詞の種類

 「すなはチ」と読む、代表的な接続詞は六種類有ります。意味は、前後の文脈に因って適宜訳しますが、一応代表的な意味を挙げておきます。

@「則」(意味は、・・であれば、・・ではあるが・それは)

 思ヒテ而不レバ(レ) (思ひて學ばざれば則ち殆し。)

A「即」(意味は、すぐに・とりもなおさず)

 先ンズレバス(レ)(先んずれば即ち人を制す。)

B「乃」(意味は、そこで、かえって、やっと、ようやく)

 大禹聖人ナルモ(二)メリ寸陰(一)ヲ(大禹は聖人なるも乃ち寸陰を惜めり。)

C「便」(意味は、すぐに・そのまま・たやすく・そこで)

 林盡(二)キ水源(一)ニ便(二)タリ一山(一)ヲ(林水源に盡き便ち一山を得たり。)

D「輒」(意味は、たやすく、すぐに、そのたびごとに、ややもすれば)

 非(レ)ザレバ(二)ルニ疾病故事(一)(レ)サ(レ)ヅルヲ(疾病故事有るに非ざれば輒ち出づるを許さず。)

E「載」(意味は、・・しながら)

 載(載ち欣び載ち奔る。)

F「迺」(意味は、そこで、かえって、やっと、ようやく)「乃」と同じような使われ方をします。

 迺(迺ち積し迺ち倉す。)

G「而」(意味は、・・であれば、・・ではあるが、それは)「則」と同じような使われ方をします。

 子欲スレバ(レ)民善ナリ矣。 (子善を欲すれば而ち民善なり。)

H「就」(意味は、そこで、すぐに)「即」や「乃」と同じような使われ方をします。

 就ヘ(レ)シ(レ)シテ(二)フ忠武(一)ト(就ち詔を加へ之を許し諡して忠武と曰ふ。)

*「有(あリ)」と「在(あリ)」との違い

@「有」は、所有を表す「あリ」です。そのため「有」の下に置かれるものは、基本的に名詞が多く、その名詞には当然送り仮名は送りません。しかし、動詞が置かれたときには、それを名詞化するために、動詞の活用語尾と「コト」を送ります。

 有(レ)リ花。(花有り。)・有(レ)リグコト(泳ぐこと有り。)

A「在」は、所在を表す「あリ」です。そのため「在」に返る前の字には、必ず「ニ」を送ります。つまり「・・・ニ在リ」と読みます。

 富貴リ(レ)(富貴は天に在り。)

*「多・少・難・易」の使われ方

 「多・少・難・易」の形容詞は、二種類の使われ方をしますので、読むときはよく文章を注意して下さい。

@「多・少・難・易」の形容詞が普通に述語として使われた時には、主語の下に置かれ、そのまま読みます。

 不ル(レ)ハ(レ)者多矣。(時に遇はざる者多し。)

A「多・少・難・易」の形容詞が述語として使われ、その述語が句をなしている時には、下から返ります。

 少年易ク(レ)、學難シ(レ)(少年老い易く、學成り難し。)

*終尾詞の種類

 漢文の末尾に置かれる終尾詞は、多種多様ですが、大きく分けると以下の四通りに分けられます。

@断定を表す「也・矣・焉」。(「なり」と読んだり、或いは終尾詞に続く直前の字を終止形に読んで、終尾詞自体を読まなかったりします)

 此父母之恩也。(此れ誠に父母の恩なり。)・・読む場合

 心誠ムレバ(レ)(二)リ眞師(一)矣。(心誠に之を求むれば必ず眞師有り。)・・読まない場合

A疑問や反語を表す「乎・與・歟・邪・耶・哉・ 焉・也」。(疑問の時は、連体形に接続して「か」と読み、終止形に接続して「や」と読みますが、反語の時は必ず「や」と読みます)

 若(二)ズ故人(一)ニ乎。(若は吾が故人に非ずや。)・・疑問

 以テ(レ)ス(レ)、可ケン(レ)フ(レ)乎。(臣を以て君を弑す、仁と謂ふ可けんや。)・・反語

B詠嘆を表す「也・哉・夫・乎・與・也夫・乎哉」。(「や・かな」と読みます)

 賢ナル哉回也。(賢なるかな回や。)

C限定を表す「耳・爾・已・而已・而已矣」。(「のみ」と読みます)

 夫子之道忠恕而已矣。(夫子の道は忠恕のみ。)

*ほぼ決まった読み方をするもの

 漢文には、「このように使われたらほぼこう読む」とするものが、何種類かあります。以下に、その代表的なものの、「読み」と「意味」とを説明します。

★「然則」

 しかラバすなはチ(読み)・そうであるならば・・・(意味)

 然ラバ一貫者忠恕也。(然らば則ち一貫とは忠恕なり。)

★「然後・而後」

 しかルのち・しかシテのち(読み)・そこで・そうしてから・そうしてのち(意味)

 然後從ヒテ而刑(レ)ス(然る後從ひて之を刑す。)

★「然而」

 しかリしかうシテ(読み)・それにもかかわらず・そうであるのに・それなのに・それでいて・そうでありながら(意味)

 然シテル(レ)タラ者也。(然り而して王たらざる者なり。) 

★「雖然」

 しかリトいへどモ(読み)・ そうであっても・けれども(意味)

 雖モ(レ)リト吾嘗ケリ(レ)矣。(然りと雖も吾嘗て之を聞けり。)

★「不然」

 しかラざレバ・しかラずンバ(読み)・そうでなければ・そうしないと(意味)

 不レバ(レ)籍何ラン(レ)(然らざれば籍何を以て此に至らん。)

★「不者・否者」

 しからざレバ・しからずンバ(読み)・そうでなければ・そうしないと(意味)

 不者ンバ屬皆且ニ(レ)ラント(レ)ト(レ)トスル(不者んば若が屬皆且に虜とする所と爲らんとす。)

★「不然則」

 しかラざレバすなはチ・しかラずンバすなはチ(読み)・そうでなかったなら・そうしなければ・そうでないと・そうしないと(意味)

 不レバ(レ)セズ(然らざれば則ち否せず。)

★「不則・否則」

 しからざレバすなはチ・しからずンバすなはチ(読み)・そうでなかったなら・そうしなければ・そうでないと・そうしないと(意味)

 不ンバタビユルトモカラン(レ)益。(不んば則ち百たび悔ゆるとも亦た竟に益無からん。)

★「何者」

 なんトナレバ(読み)・なぜなら・なぜかといえば(意味・・理由を説明します)

 何者トナレバ彼之所ノ(レ)ル(レ)(二)ギ數金(一)ニ耳。(何者となれば彼の獲る所の者は數金に過ぎざるのみ。)

★「何則」

 なんトナレバすなはチ(読み)・なぜなら・・・だからである・なぜかといえば・・・だからだ(意味・・理由を説明しますが、「何者」よりやや意味が強く、文末に「レバナリ」の送り仮名を送ることが多いです)

 何トナレバヨリ(二)ス人國(一)ヲナレバナリ(何となれば則ち彼は固より人國を亂す者なればなり。)

★「於是」

 ここニおいテ(読み)・そこで・このような訳で(意味・・接続詞です)

 於テ(レ)人主(三)ラハ(二)ラ(一)ヲ(是に於て人主も亦た自らは其の過を知らず。)

★「是以・此以」

 ここヲもっテ(読み)・だから・そこで・そうだから・このような訳で(意味・・接続詞です)

 是後世無シ(レ)フルコト(是を以て後世傳ふること無し。)

★「以是・以此」

 これヲもっテ(読み)・これで・このことで・これに因って(意味)

 以テ(レ)(二)ル(一)ヲ(是を以て其の能を知る。)

★「如是・如此・如斯・如之・若是・若此」

 かくノごとシ(読み)・このようである・このようだ・この通りだ(意味)

 有ル(レ)本者シ(レ)(本有る者は是の如し。)

★「以爲」

 おもヘラク・・・ト(読み・・「以て・・ ・と爲す」とも読めます。そのため文末は「ト」で結びます)・・・・と思う・・・と考える・・・と見なす・心に思うには・・・(意味)

 以爲ヘラクス(レ)之害(二)ダシト於寒(一)ヨリモ(以爲へらく官を侵すの害は寒よりも甚だしと。)

★「所以」

 ゆゑん(読み)・・・・のわけ・・・するわけ・・・のもの・・・するためのも・・・するところのもの(意味・・理由・目的・方法などを表します)

 非(四)ザル(三)(二)ルル於孺子之父母(一)ニ也。(交を孺子の父母に内るる所以に非ざるなり。)

*特殊な読み方をするもの

 漢文には、熟語の意味を当てて、「特殊な読み方」をするものが、何種類か有ります。以下に、その代表的なものの、「読み」と「意味」とを説明します。

★「所謂」

 いはゆる(読み・返り点を施さず、二字で上記のように読みます)・・・・と言われているそれは・世に言われている所の(意味)

 非(下)ザル所謂(いはゆる)傳(二)ヘ(一)ヲ(二)ク(一)ヲ(上)ニ也。(吾が所謂其の道を傳へ其の惑を解く者に非ざるなり。)

★「云爾」

 しかいふ(読み・・返り点を施さず、二字で上記のように読みます)・この通りである・このようである(意味)

 不ト(レ)(二)ラ老之将(一)ニ・ルヲ(レ)ラント、云爾(しかいふ)。(老の将に至らんとするを知らずと、云爾。)

★「就中」

 なかんづく(読み・・返り点を施さず、二字で上記のように読みます)・とりわけ・その中でも特に・多くの中でも特に(意味)

 就中(なかんづく)泣下ルコト(就中泣下ること誰か最も多し。)

★「無寧・無乃」

 むしロ(読み・・これらの二字は、文脈に因っては、「寧ろ・・・無からんや」とか「乃ち・・・無からんや」とも読みます)・いっそ・むしろ(意味・・願望や反語を表します)

 無寧(むし)(二)セン於二三子之手(一)ニ乎。(無寧ろ二三子の手に死せんか。)

 無(三)カラン(二)スルコト於二三子之手(一)ニ乎。(寧ろ二三子之の手に死すること無からんや。)

 居(レ)リテ而行(レ)フハ無乃(むし)大簡ナラン乎。(簡に居りて簡を行ふは無乃ろ大簡ならんか。)

 居(レ)リテ而行(レ)フハ(二)カラン大簡(一)ナルコト乎。(簡に居りて簡を行ふは乃ち大簡なること無からんや。)

★「聞説」

 きくならく(読み・・文末は「ト」を送ります)・聞いた所に因ると・聞き及ぶには(意味)

 聞説(きくならく)梅花拆(二)クト暁風(一)ニ(聞説梅花暁風に拆くと。)

★「一任」

 さもあらばあれ(読み)・ままよ・それはともかく・何はともあれ・それならばそれでかまわない(意味)

 一任(さもあらばあれ)喧梱遶(二)ル四鄰(一)ヲ(一任喧梱四鄰を遶る。)

★「加之」

 しかのみならず(読み・・但し、今では「之に加ふるに」と読むのが一般的です)・そればかりではなく・あまつさえ・加うるに(意味)

 臣竭(二)クシ股肱之力(一)ヲ、加之(しかのみならず)以(二)テセン忠貞(一)ヲ(臣其の股肱の力を竭くし、加之忠貞を以てせん。)

 臣竭(二)クシ股肱之力(一)ヲ、加(レ)フルニ(二)テセン忠貞(一)ヲ(臣其の股肱の力を竭くし、之に加ふるに忠貞を以てせん。)

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 漢文の基本型について

*漢文の基本形態は六種類有りますが、目的語には必ず「ヲ」を送りますし、補語には「ニ」「ト」「ヨリ」「ヨリモ」などを送ります。その目的語や補語から述語に返るため、古来「ヲ・ニ・ト会ったら返れ」と言われています。

@主語(S)+述語(V)の形

何が(は) どうする・どうだ・どうである

 日没・鳥飛・雲白・地・我ナリ 

*この形は、語順が日本語と同じです。

A主語(S)+述語(V)+目的語(O)の形

何が(は) どうする 何を

 君フ(レ)(君は書を買ふ。)

 君子ブ(レ)(君子は道を學ぶ。)

*目的語は述語の後に置かれ、送り仮名は「ヲ」を送ります。この形をを日本語の語順に置き換えますと、「何が 何を どうする」となりますから、目的語から述語に返ることになります。

B主語(S)+述語(V)+(於・乎・于)+補 語(C)の形

何が(は) どうする 何に

 青山(二)タハル北郭(一)ニ(青山は北郭に横たはる。)

 霜葉(二)ナリ於二月(一)ヨリモ(霜葉は二月の花よりも紅なり。)

 小人之學也、入(二)リ乎耳(一)ニ、出(二)ヅ乎口(一)ヨリ(小人の學や、耳に入り、口より出づ。)

*補語は述語の後に置かれ、その上に前置詞である「於・乎・于」を用いることが多く、送り仮名は「ニ」「ト」「ヨリ」「ヨリモ」などを送ります。この形を日本語の語順に置き換えますと、「何が 何に どうする」となりますから、補語から述語に返ることになります。

C主語(S)+述語(V)+目的語(O)+(於・乎・于)+補 語(C)の形

何が(は) どうする 何を 何に

 孔子(二)フ於老子(一)ニ(孔子は禮を老子に問ふ。)

 王(二)ス仁政於民(一)ニ(王は仁政を民に施す。)

 我(二)ブ于洞庭湖(一)ニ(我は舟を洞庭湖に浮ぶ。)

*述語が目的語と補語とを伴うときには、目的語+補語の語順になります。この形を日本語の語順に置き換えますと、「何が 何を 何に どうする」となりますから、補語から述語に返ることになります。

D主語(S)+述語(V)+補 語(C)目的語(O)の形

何が(は) どうする 何に 何を

 王(二)フ(一)ヲ(王は臣に地を與ふ。)

 父(二)ル財寶(一)ヲ(父は子に財寶を讓る。)

 項梁(二)フ兵法(一)ヲ(項梁は籍に兵法を教ふ。)

*述語が人に対する贈与や教示を表す、「教」「與」「授」などの他動詞のときには、補語+目的語の語順になります。またこのときは、補語の上に前置詞を伴いません。この形を日本語の語順に置き換えますと、「何が 何に 何を どうする」となりますから、目的語から述語に返ることになります。

E主語(S)+述語(V)+補語(C)+(於・乎・于)+補 語(C)の形

何が(は) どうする 何に 何に

 劉邦(二)ク於漢中(一)ニ(劉邦は位に漢中に即く。)

 管仲(二)ズ於齊(一)ニ(管仲は政に齊に任ず。)

 孫悟空(二)ル金斗雲於火華山(一)ニ(孫悟空は金斗雲に火華山に乘る。)

*述語が補語を二つ伴うときには、二つ目の補語は、場所を示すことが多いです。この形を日本語の語順に置き換えますと、「何が 何に 何に どうする」となりますから、補語から述語に返ることになります。

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 熟語の基本型について

熟語の基本的形態

 熟語の基本形態は、主要なものが七種類有ります。

@主述関係(上が主語で下が述語の形)

 地震(じしん・地震フ)・日没(にちぼつ・日没ス)・年長(ねんちょう・年長ズ)・雷鳴 (らいめい・雷鳴ル)

A補足関係(上が述語で下が補語・目的語の形)

 入学(にゅうがく・学ニ入ル)・読書(どくしょ・書ヲ読ム)・登山(とざん・山ニ登ル) ・帰国(きこく・国ニ帰ル)・将軍(しょうぐん・軍ヲ将ユ)

B認定関係上が否定や可否の認定を示す語で、下がその内訳の語の形)

 不義(ふぎ・義ナラズ)・不幸(ふこう・幸ナラズ)・非常(ひじょう・常ニ非ズ) ・無窮(むきゅう・窮マルコト無シ)・難解(なんかい・解キ難シ)

C修飾関係(上が下を修飾する形)

 三省(さんせい・三タビ省ミル)・晩春(ばんしゅん・晩キ春)・大志(たいし・大イナル志)・林立(りんりつ・林ノゴトク立ツ)・深海(しんかい・深キ海)

D並列関係(上と下とが同類の形)

 言語(げんご)・憎惡(ぞうお)・官職(かんしょく)・貨幣(かへい)・弓矢(きゅうし)

E対立関係(上と下とが反対の形)

 賢愚(けんぐ)・天地(てんち)・上下(じょうげ)・左右(さゆう)・前後(ぜんご)

Fその他

*名詞に名詞を重ねた形

 山色(さんしょく・山の色)・人心(じんしん・人の心)・水流(すいりゅう・水の流)・梅花(ばいか・梅の花)・月光(げっこう・月の光)

*ある状態を示す同じ字を重ねた形

 堂々(どうどう)・悠々(ゆうゆう)・揚々(ようよう)・紛々(ふんぷん)・閃々(もんもん)

*同じ子音の字を重ねた形

 参差(シんシ)・髣髴(ホうフつ)・恍惚(コうコつ)・猶予(ユうヨ)・陸離(リくリ)

*同じ韻の字を重ねた形

 混沌(こンとン)・散漫(さンまン)・逍遥(しょウよウ)・辟易(へキえキ)・徘徊(はイかイ)

*下に状態を示す字が添えられた形

 突如(とつジョ)・忽焉(こつエン)・断乎(だんコ)・依然(いゼン)・完爾(かんジ)

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 漢和辞書の引き方について

*漢和辞書の特徴

 漢文や訓読を学ぶ上で必要なことは、如何に早く漢字の「音」や「訓(意味)」を理解するか、と言うことです。そのために『漢和辞書』が、漢文を学び時の必須の工具書となり、それを如何にうまく使いこなすかが、重要になってきます。以下、漢和辞書の引き方や漢字の成り立ち・漢字の音訓などについて、簡単に説明いたします。

 漢和辞書が、他の国語辞書や英和辞書などと大きく異なる点は、引き方が多様であると言う点です。国語辞書は「あ・い・う」の五十音順引きで、英和辞書は「A・B・C」の二十六字順引きで、それぞれ方法が一種類であるのに対して、漢和辞書は、「音引き」「訓引き」「部首引き」「総画引き」の四種類が有ります。

 「音」が分かっていれば「音引き」をすればよく、「訓」が分かっていれば「訓引き」をすればよいのですが、往々にして漢文は、「音」も「訓」も分からない字が多数出てきます。そのときは、「部首引き」か「総画引き」で引きますが、画数の多い漢字は画数を数え間違い易い傾向が生じます。そこで「部首引き」が有効な手段となります。

 漢和辞書には、本の最初か最後に必ず「部首一覧」が付いていますが、「にんべん」とか「さんずい」・「しんにゅう」・「くさかんむり」など、代表的な部首に関しては、自分が常時使う辞書のページ数を覚え込んで暗記するぐらいにしておいた方が便利です。

 次ぎに具体的に字を引いてみましょう。

 「音」は「ジョウ」ですので、「ジョウ」で「音引き」出来ます。「訓」は「みだす」ですので、「みだす」で「訓引き」出来ます。しかし、音も訓を分からない時には、十八画の「総画引き」が出来ますが、「てへんの十五画」と言う「部首引き」も出来ます。

 この「擾」の字を引きますと、字 の下に「漢ジョウ・呉ニョウ」と書かれていますが、これが「音」です。「漢」とは「漢音」のことで「呉」とは「呉音」のことです。(漢音・呉音の違いは後で説明します)その下に、「みだす」「みだれる」「ならす」などと出てくるのが「訓」(訓についても後で説明します)、つまり意味のことです。また字の下か「音」の下に、「上」とか「入」とか書かれていますが、これは字の「平仄」(後で説明します)のことです。これらの説明の後に「擾」の字を上に頂く熟語が並び説明されています。

 また「部首引き」の場合、今の漢和辞書と古い時代の漢和辞書では、部首が異なることが有ります。例えば、「初」と言う字は、今の辞書では部首は左側の「ころもへん」ですが、古くは右側の「りっとう」です。これは、辞書制作者が勝手に変えているのではなく、本来は漢字の成り立ち(後で説明します)依拠して古い辞書の如く「りっとう」の部首であったものが、「部首引き」での引き易さを求めて、今の辞書の如く「ころもへん」に変わったものです。

*漢字の成り立ち

 全ての漢字は、その成り立ちから「象形」「指事」「会意」「形声」の四種類と、その用法から「転注」「仮借」の二種類、合計六種類に分類されますが、これは、後漢の許愼と言う学者が、それまでの漢字九千三百五十三字を集めて、解説・分類した中国最古の字書である『説文解字』での分類法で、これを「六書」と言います。

@象形

 象形とは、物の形や姿にかたどって絵に描き、それが簡略化されて出来上がった文字のことです。 

 人・山・川・馬・牛

A指事

 指事とは、絵に描けない抽象的な概念を、点や線で象徴的に表した文字のことです。

 一・二・上・下・本

B会意

 会意とは、象形文字や指示文字を二字以上組み合わせ、新しい意味を持たせて作った文字のことです。

 林・因・院・台・働

C形声

 形声とは、象形文字や指示文字から音を表す文字と意味を表す文字とを組み合わせ、新しい意味を持たせて作った文字のことで、漢字の八割以上が、この形声文字だと言われています。

 園・駅・館・救・枝

D転注

 転注とは、本来の文字の意味を、拡大解釈してよく似た新しい意味に使ってゆくと言う、意味上の特殊な用法だと言われていますが、諸説紛々として入り乱れ、未だ確定的な説は無く、よく分からないのが現状です。

 行(行は本来「十字路」を表す象形文字ですが、「ゆく」の意味に使用する)

E仮借

 仮借とは、ある意味を表す言葉に音は有っても文字が無い場合、それと同じ音の文字を借りてその言葉の文字として使ってゆくと言う、音上の特殊な用法です。

 豆(豆は本来「たかつき」を表す象形文字ですが、その音が「まめ」を表す音の「トウ」と同じであったため、「マメ」の意味に仮りて使用する)

*漢字の字体の変遷

 漢字の字体の変遷は、新石器時代の土器に彫られた「陶文」から始まるとされていますが、この「陶文」は未だ十分に解明されていませんので、具体的には「甲骨文字」からの変遷が中心です。

@甲骨文字(殷代)

 甲骨文字とは、亀の腹甲や牛の骨などに刻み込まれた文字で、王室の祭祀や生活に関する占いの言葉が中心になっているため、「卜辞」とも呼ばれています。現在、約四千種類ほどが発見されていますが、解明されているのは二千字ほどです。

A金文(殷末〜周)

 金文とは、青銅器に鋳込んだり彫り込んだりされた文字のことです。

B古文・籀文(戦国時代)

 古文は、主に中国の東部地方で、籀文は、中国の西部つまり秦地方で、ほぼ同時代に各々使われていた文字で、籀文は、大篆とも呼ばれます。

C篆書(戦国〜秦)

 篆書とは、戦国時代から秦にかけて使用されていた字体の文字のことですが、特に秦の始皇帝が宰相の李斯に命じて、それ以前の古文や籀文を整理させた所謂文字統一後の字体を特に小篆と呼び、それ以前の字体を大篆と総称します。尚、先に「六書」の所で出てきた許愼の『説文解字』は、その親字の殆どが小篆(たまに大篆も有ります)です。

D隷書(秦〜後漢)

 隷書とは、篆書を実用的に書きやすく簡略化した字体です。

E楷書(後漢〜)

 楷書とは、漢代の隷書の字画を厳格にして、一点一画を崩さずに、きちんと書く字体のことで、真書・正書とも呼ばれています。

F行書(後漢〜)

 行書とは、楷書の筆画を少し省略してくずした字体のことで、楷書と草書との中間的な字体です。

G草書(漢代〜)

 草書とは、行書以上に筆画を省略して続けて書く字体のことで、一般的には行書を崩した書き方から出たと言われていますが、現在では行書より早く秦末頃に、篆書や隷書をくずすことから発生したのではないか、とも言われています。

*漢字の音の種類

 漢字の音や訓は一種類ではなく、複数存在していますが、先ず発生の仕方に因って四種類に分かれます。これが「平仄」です。

平仄

 平仄とは、漢字の音の高低とアクセントに因る分類で、平声・上声・去声・入声の四声が有りますが、このうち上声・去声・入声の三声を一括して仄声と呼びます。平声は高低の無い平らな音、上声は尻上がりの音、去声は初めが弱く終わりが強い音、入声は短くつまる音、と言われています。この平仄の違いは、韻文特に漢詩を作るときに、重要になってきますし、またこの四声が変化を遂げながら、現在の中国語の四声(一声・二声・三声・四声)に移ってゆきます。

 書籍によっては、使用される漢字に平仄の印が付けられていますが、それは、漢字の左下から時計回りに付けられ、左下が平声、左上が上声、右上が去声、右下が入声となります。

反切

 反切とは、漢字の音を示す表記方法の一つで、後漢時代に考え出されたと言われています。漢字の音を示すに当たり、別の二つの漢字(その字と同声の字と同韻の字)の音韻を借りて表します。反切上字と言われる上の字の声母(語頭の子音)と、反切下字と言われる下の字の韻母(字音から声母を除いた部分)とを合わせて、反切帰字と言われる別の漢字の一音を示します。

 反切は、全ての漢字に付けられるのではなく、「あまり使われない特殊な漢字」とか、「音の分からない漢字」とか、或いは日常的な漢字でも「普通とは異なる意味に使われるとき」などに付けられます。

例えば

「官、古丸反」(官は、古丸の反)は、古「KO」の「K」と、丸「GAN」の「AN」を合わせて「KAN」の音を表し、それが「官」の音です。

「東、徳紅切」(東は、徳紅の切)は、徳「TOKU」の「T」と、紅「KOU」の「OU」を合わせて「TOU」の音を表し、それが「東」の音です。

 今、用例として理解しやすくするために、日本での漢字音で示しておきましたが、正しくは当時の中国音で合わせます。反切は、一般的には「何何反」と書かれますが、「反」には「そむく」意が有るため、唐代になって「切」に改め「何何切」と書くようになった、と言われており、そこから「反切」と言う言い方が出て来ますが、実際には宋代でも「反」は使われていますし、また「反」の代わりに「翻」の字が使われ、「何何翻」と表記されたものも有ります。

音と訓の種類

 漢字の音には、中国から伝わった「呉音」「漢音」「唐音」と、我が国で読み慣わしている「慣用音」との四種類が有り、訓にも「正訓」「国訓」「義(熟字)訓」の三種類が有ります。

呉音

 呉音とは、六世紀頃に朝鮮半島を経由して伝わった漢字音で、日本に伝わった漢字音としては、最も古い音です。この音は、中国の六朝時代の長江下流域(呉地方)で使われていた音で、仏教関係の用語に多く残っています。

 東京(キョウ)・修行(ギョウ)・頭(ズ)

漢音

 漢音とは、七世紀以後に遣唐使や留学生などに因って伝えられた、隋・唐の都であった長安地方で使われていた音のことです。

 京(ケイ)城・進行(コウ)・頭(トウ)

唐(宋)音

 唐音とは、鎌倉・室町以後に禅僧や商人などに因って伝えられた、中国の宋・元時代の長江下流域で使われていた音で、宋音とも言われています。

 南京(キン)・行(アン)宮・饅頭(ジュウ)

慣用音

 慣用音とは、呉音でも漢音でも唐音でもなく、中国の辞典に無い発音であっても、日本で長年通用しており、慣用的に読み慣れている音のことです。

 重(ジュウ)箱・封(フウ)筒・漁(リョウ)

正訓

 正訓とは、漢字本来の意味に忠実な、日本語としての読みのことです。

 山(やま)・川(かわ)・雪(ゆき)・花(はな)・人(ひと)

国訓

 国訓とは、漢字本来の意味とは関係無く、日本独自の意味を当てはめた、読みのことです。カタカナは、漢字本来の意味です。

 柏(かしわ・ヒノキ)・梓(あずさ・ササゲ)・鮎(あゆ・ナマズ)・鮭(さけ・フグ)・鰍(かじか・ドジョウ)

義(熟字)訓

 義訓とは、熟語の漢字に対して、漢字一字一字の意味には関係なく、熟語全体に対してそれに適当する日本語を当てた、読みのことです。

 海苔(のり)・百合(ゆり)・山車(だし)・梅雨(つゆ)・団扇(うちわ)

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  否定型の代表的パターン

○否定形の種類

 否定形には、大きく分けて「六種類」が有ります。

@否定詞を単用するもの。

A否定詞と助動詞や動詞からなるもの。

B否定詞を重用するもの。

C否定詞と副詞からなるもの。

D否定詞が単独で用いられるもの。

E特殊な用法のもの。

 以下、これらを順次説明致します。

@否定詞を単用するもの。

★不(弗)〜 

 〜(セ)ず(読み)〜【し】ない(意味)

 弗レバ(レ)ル(レ)(二)ラ(一)キヲ也。(食はざれば其の旨きを知らざるなり。)

★非(匪)〜 

 〜ニあらズ(読み)〜【で】ない(意味)

 富貴(二)ズ(一)ニ(富貴は吾が願に非ず。)

★無(莫・亡・罔・末・靡・勿・毋・蔑・无)〜 

 〜(スルコト・スルモノ)なシ(読み)〜【が】ない(意味)

 存(二)スル乎人(一)ニシ(レ)(二)キハ於眸子(一)ヨリ(人に存する者は眸子より良きは莫し。)

★勿(莫・亡・罔・末・靡・無・毋・蔑・无)〜 

 〜スル(コト)なカレ(読み)〜するな・〜してはいけない(意味・禁止を表します)

 過テバカレ(レ)ルコト(レ)ムルニ(過てば則ち改むるに憚ること勿かれ。)

★未〜 

 いまダ〜(セ)ず(読み・再読文字を使用)まだ〜【し】ない・まだ〜【で】はない(意味)

 萬里長征人未ダ(レ)(萬里長征人未だ還らず。)

A否定詞と助動詞や動詞からなるもの。

★「不(弗)能〜」

 〜スル(コト)あたハず(読み)・〜できない(意味・・「〜する能力がない」と言うニュアンスです)

 其人、弗(レ)ハ(レ)フルコト(其の人、應ふること能はず。)

★「無(莫)能〜」

 よク〜スル(コト・モノ)なシ(読み)・〜できるものはない(意味・・「〜する能力があるものはいない」と言うニュアンスです)

 吾盾之堅キコト(二)キ(一)スモノ也。(吾が盾の堅きこと能く陷すもの莫きなり。)

★「不可〜」

 〜(ス)べカラず(読み)・〜できない・〜するな(意味・・「〜することができない」「〜してはいけない」と言うニュアンスです)

 井蛙(レ)(三)カラ(二)ル於海(一)ヲ(井蛙は以に海を語る可からず。)

★「不得〜」

 〜(スル)ヲえず(読み)・〜できない(意味・・「〜する機会が無くてできない」と言うニュアンスです)

 有ラバ(レ)(二)恐懼(一)スル(レ)(二)(一)ヲ(恐懼する所有らば則ち其の正を得ず。)

B否定詞を重用(二重否定)するもの。

★「無(莫)不〜」

 〜(セ)ざル(ハ・コト)なシ(読み)・〜しないものはない(みな〜する)(意味)

 舜(二)テ天下之善(一)ニシ(レ)ル(レ)(舜は天下の善に於て從はざる無し。)

★「非不〜」

 〜(セ)ざルニあらズ(読み)・〜しないのではない(必ず〜する)(意味)

 非ザル(レ)ルニ(レ)マ(レ)キヲ也。(寒きを惡まざるに非ざるなり。)

★「無(莫)非〜」

 〜ニあらザル(ハ)なシ(読み)・〜でないものはない(みな〜である)(意味)

 風雨霜露、無キ(レ)ザル(レ)也。(風雨霜露、教に非ざる無きなり。)

★「非無〜」

 〜なキニあらズ(読み)・〜がないわけではない(必ず〜がある・必ず〜がいる)(意味)

 非ザル(レ)(二)キニ(一)也。(其の謂無きに非ざるなり。)

★「無〜不(弗)〜」

 〜として〜(セ・ナラ)ざル(ハ)なシ(読み)・どんな〜でも〜しないもの(こと)はない(すべて〜は〜する)(意味)

 偶有(二)リ名酒(一)、無(に)シトシテ(一レ)ルハ(レ一)(偶たま名酒有り、夕として飮まざるは無し。)

★「不可不〜」

 〜(セ)ざルべカラず(読み)・〜しなければならない・〜しないわけにはいかない(意味)

 士(レ)(三)カラ(二)ル弘毅(一)ナラ(士は以て弘毅ならざる可からず。)

★「不〜不〜」

 〜(セ)ずンバアラず(読み)・〜しないことはない・〜しないではいられない(意味)

 良農(下)(二)ニ水旱(一)ノ(上レ)ンバアラ(レ)(良農は水旱の爲に耕さずんばあらず。)

★「未嘗(曾)不〜」

 いまダかつテ〜(セ)ずンバアラず(読み)・これまで〜しなかったことないは(いままで必ず〜した)(意味)

 至(二)リ於公(一)ニ(三)ダ(二)ンバアラ感憤歎息(一)セ(公の傳に至り未だ嘗て感憤歎息せずんばあらず。)

★「不敢不〜」

 あへテ〜(セ)ずンバアラず(読み)・どうしても(しいて)〜しないわけにはいかない(意味)

 有ラバ(レ)(レ)ル(レ)(二)ンバアラ(一レ)(足らざる所有らば敢て勉めずんばあらず。)

C否定詞と副詞からなるもの。

 否定詞と副詞とで構成される否定形は、一般的に「副詞が否定詞の上にあるもの」「全部否定」と称し、「副詞が否定詞の下にあるもの」「部分(一部)否定」と称し、送り仮名も異なってきますが、 全ての副詞がこのように判然と分かれる訳ではありませんので、注意が必要です。以下、代表的な副詞を挙げて、説明致します。

【常】(つねニ・つねニハ)

★「常不〜」全部否定

 つねニ〜(セ)ず(読み)・常に〜しない・いつも〜しない(意味)

★「不常〜」部分否定

 つねニハ〜(セ)ず(読み)・いつも〜するわけではない・いつも〜とは限らない(意味)

 種ウルニ(レ)(レ)バ(レ)(之を種うるに常に時に及ばず。)・・全部否定

 伯楽(二)ニハ(一)ラ(伯楽は常には有らず。)・・部分否定

【必】(かならズ・かならズシモ)

★「必不〜」全部否定

 かならズ〜(セ)ず(読み)・かならず〜しない・絶対に〜することはない(意味)

★「不必〜」部分否定

 かならズシモ〜(セ)ず(読み)・かならず〜するとは限らない・絶対〜する必要はない(意味)

 八卿和睦(レ)テ(レ)(八卿和睦し必ず鄭を棄てず。)・・全部否定

 勇者(二)ズシモラ(一レ仁。(勇者は必ずしも仁有らず。)・・部分否定

【倶(同)】(ともニ・ともニハ)

★「倶不〜」全部否定

 ともニ〜(セ)ず(読み)・どちらも〜しない・同じように〜しない(意味)

★「不倶〜」部分否定

 ともニハ〜(セ)ず(読み)・同じように〜するわけではない・両方とも〜とは限らない(意味)

 我(レ)汝倶ル(レ)也。(我と汝と倶に行かざるなり。)・・全部否定

 猶清光不(二)ルヲニハ(一)(猶ほ恐る清光同には見ざるを。)・・部分否定

【盡(殫)】(ことごとク・ことごとクハ)

★「盡不〜」全部否定

 ことごとク〜(セ)ず(読み)・すべて〜しない・すべて〜でない(意味)

★「不盡〜」部分否定

 ことごとクハ〜(セ)ず(読み)・すべてが〜するわけではない・すべてが〜ではない(意味)

 財盡(レ)ハ(レ)(二)フコト(一)メニ(財盡く其の求めに勝ふこと能はず。)・・全部否定

 大抵若シ(レ)、不(レ)(二)ハクハ(一)スルコト(大抵是の若し、殫くは記すること能はず。)・・部分否定

【全】(まったク・まったクハ)

★「全不〜」全部否定

 まったク〜(セ)ず(読み)・すべて〜しない・すべて〜でない(意味)

★「不全〜」部分否定

 まったクハ〜(セ)ず(読み)・すべてが〜するわけではない・すべてが〜ではない(意味

 以テ(レ)グモ(レ)(レ)ツカ(刀を以て之を剥ぐも身は全く傷つかず。)・・全部否定

 觀(二)ルニ古今文人(一)ヲ(三)クハ(二)ラ(一)ニ(古今の文人を觀るに多く全くは此の處に了らず。)・・部分否定

【甚(太)】(はなはダ・はなはダシクハ)

★「甚不〜」全部否定

 はなはダ〜(セ)ず(読み)・ひどく〜しない・たいへん〜しない(意味)

★「不甚〜」部分否定

 はなはダシクハ〜(セ)ず(読み)・そんなに〜するわけではない・ひどく〜ようとはしない(意味)

 守尉長吏教訓甚(レ)ナラ(守尉長吏の教訓甚だ善ならず。)・・全部否定

 雖モ(レ)ルト(レ)(二)ラダシクハ(一)ムニ(知ると雖も太だしくは惜むに至らず。)・・部分否定

【久】(ひさシク・ひさシクハ)

★「久不〜」全部否定

 ひさシク〜(セ)ず(読み)・長い間〜しない・長い間〜でない(意味)

★「不久〜」部分否定

 ひさシクハ〜(セ)ず(読み)・長い間〜するわけではない・長い間〜とは限らない(意味)

 辭スルニ(二)テシ疾病(一)ヲ、久シク(レ)カ(レ)(辭するに疾病を以てし、久しく職に赴かず。)・・全部否定

 違逆之道(二)シクハ(一)カラ(違逆の道は久しくは全からず。)・・部分否定

【兩】(ふたツナガラ・ふたツナガラハ)

★「兩不〜」全部否定

 ふたツナガラ〜(セ)ず(読み)・両方とも〜しない・両方とも〜でない(意味)

★「不兩〜」部分否定

 ふたツナガラハ〜(セ)ず(読み)・両方とも〜するわけではない・両方が〜ではない(意味)

 兩ツナガラ(二)相傷(一)ハ(兩つながら相傷はず。)・・全部否定

 漢・賊(二)ツナガラハ(一)タ(漢・賊は兩つながらは立たず)・・部分否定

【再】(ふたたビ・ふたたビハ)

★「再不〜」全部否定

 ふたたビ〜(セ)ず(読み)・二度めも〜しない・二度めも〜でない(意味)

★「不再〜」部分否定

 ふたたビハ〜(セ)ず(読み)・二度とは〜しない・二度とも〜するわけではない(意味)

 再レバ(レ)(二)ル(一)ヲ(再び朝せざれば則ち其の地を削る。)・・全部否定

 時ナル乎時、不(二)ビハ(一)タラ(時なるかな時、再びは來たらず。)・・部分否定

【自】(みずかラ・みずかラハ)

★「自不〜」全部否定

 みずかラ〜(セ)ず(読み・・この場合、「みずかラ」ではなく「おのずかラ」と読む用例が多い)・自分自身で〜しない・自然に〜しない(意味)

★「不自〜」部分否定

 みずかラハ〜(セ)ず(読み)・自分自身では〜しない・自分自身では〜することがない(意味)

 人自(レ)ビ(レ)クニ(人自ら欺くに忍びず。)・・全否定

 然レドモ(二)リキラハ(一)ハ(然れども自らは意はざりき。)・・部分否定

 この他にも、よく用いられるものに、【重】(かさネテ・かさネテハ)・【驟】(にはカニ・にはカニハ)・【少】(しばらク・しばらクモ)・【多】(おおク・おおクハ)・【一】(いつニ・いつトシテ)などがあります。

D否定詞が単独で用いられるもの。

★「〜不(否)。」

 しからず・〜いな(ヤ)。(読み)・そうでない・そうでないのか(意味)

 視(二)ヨ(一)ヲ、尚リヤ(吾が舌を視よ、尚ほ在りや不や。)・・(不は不在の省略形です)

★「〜未。」

 〜いまダシ(ヤ)。(読み)・〜はまだです・〜はまだですか(意味)

 寒梅著ケシヤ(レ)ダシヤ(寒梅花を著けしや未だしや。)・・(未は未著花の省略形です)

★「不(者)〜」

 しからず(ざ)ン(レ)バ〜(読み)・そうでなければ〜・そうしなければ〜(意味)

 若殺(二)セ沛公(一)ヲ。不者ンバニ(レ)ラント(レ)ト(レ)トスル(若沛公を殺せ。不者んば且に虜とする所と爲らんとす。)

E特殊な用法のもの。

【敢】(あへテ)

 「敢」は、否定詞の上に置かれた(全部否定の形)時は、「反語」を表し、否定詞の下に置かれた(部分否定の形)時は、「強否(強い否定)」を表します。

★「敢不〜」(反語)

 あへテ〜(セ)ざラン(ヤ)(読み)・どうして〜しないだろうか(きっと〜する)(意味)

★「不敢〜」(強否)

 あへテ〜(セ)ず(読み)・決して〜しない・無理に〜しない(意味)

 百獸之見テ(レ)而敢ラン(レ)乎。(百獸の我を見て敢て走らざらんや。)(反語)

 強秦(三)ル(二)ヘ於趙(一)ニ(強秦の敢て兵を趙に加へざる者は。)(強否)

【唯(惟・但・徒・直・只・第・啻・止特・祇】(たダ)

 「唯」は、否定詞の上に置かれた(全部否定の形)時は、「否定の限定や強調」を表し、否定詞の下に置かれた(部分否定の形)時は、「単に・・・だけではなく・・・と言う、累加の内容」を表します。

★「唯(惟・但・徒・直・只・第・啻・止特・祇不〜」(否定の限定や強調)

 たダ〜(セ・ナラ)ざるのみ(読み)・単に・・・しない(でない)だけだ(意味)

★「不唯(惟・但・徒・直・只・第・啻・止特・祇〜」(累加)

 たダニ〜(ス・ナル)ノミナラず・・・(読み)・単に・・・だけではなく・・・(意味)

 直ダ不(二)百歩(一)ナラ耳。(直だ百歩ならざるのみ。)(強否)

 不(下)惟ダニ於(二)テ本紀(一)ニ多カルノミナラ(上レ)(レ)諱ム、並ビニ列傳中亦タ多シ(レ)(レ)諱ム矣。(惟だに本紀に於て諱む所多かるのみならず、並びに列傳中亦た諱む所多し。)(累加)

【亦】(まタ)

 「亦」は、否定詞の上に置かれた(全部否定の形)時は、ただの並列を表す接続の「また」で、否定詞の下に置かれた(部分否定の形)時は、「詠嘆」を表します。

★「亦不〜」(並列の接続)

 まタ〜(セ・ナラ)ず(読み)・また〜しない・また〜でない(意味)

★「不亦〜」(詠嘆)

 まタ〜ナラずヤ(読み)・何と〜ではありませんか・何とまあ〜ではないか(意味)

 怨(レ)ラ(レ)、亦(レ)ラ(レ)(怨は大に在らず、亦た小に在らず。)(並列の接続)

 人不シテ(レ)而不(レ)、不(二)君子(一)ナラ乎。(人知らずして慍みず、亦た君子ならずや。)(詠嘆)

【復】(まタ)

 「復」は、否定詞の上に置かれた(全部否定の形)時は、「〜しないことを、ふたたび(重ねて)する」という意味を表しますが、否定詞の下に置かれた(部分否定の形)時は、部分否定の意味を表す時と、普通の否定を表す時とが有りますので、訳す時に注意が必要です。

★「復不〜」(否定)

 まタ〜セず(読み)・ふたたび〜しない・重ねて〜しない(意味)

★「不復〜」(部分否定と否定)

 まタ〜セず(読み)・二度とは〜しない(意味・・部分否定)・そのまま・それっきり・もとのとおり(意味・・否定)

 雖モ(レ)(二)リト大臣(一)(二)信任(一)セ(大臣有りと雖も復た信任せず。)

 兔不シテ(レ)(二)カラ(一)而身(二)レリ宋國(一)ト(兔復た得可からずして身は宋國の笑と爲れり。)(部分否定)

 來(二)タリ絶境(一)ニ、不(二)(一)デ焉。(此の絶境に來たり、復た出でず。)(否定)

【曾(嘗)】(かつテ)

 「曾(嘗)」は、否定詞の上に置かれた(全部否定の形)時であれ、否定詞の下に置かれた(部分否定の形)時であれ、共に否定の意味を表します。

★「曾(嘗)不〜」「不曾(嘗)〜」(否定)

 かつテ〜(セ)ず(読み)・全く・一度も・これまでに〜し(で)ない(意味・・否定)

 孤嘗(レ)ラ(レ)(レ)呉戰(孤嘗て力を料らず乃ち呉と戰ふ。)(否定)

 魂魄不(二)タリテ(一レ)(魂魄曾て來たりて夢に入らず。)(否定)

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 使役型の代表的パターン

 使役形とは、「他のものにある動作をさせる意を表す」語法で、大きく分けて「四種類」が有ります。

@使役を表す助動詞として動詞を用いるもの。

A使役の意味を暗示する動詞を用いるもの。

B前後の文脈や内容から使役に読むもの。

C使役を表す助動詞として動詞を用い、仮定を表 すもの。

 以下、これらを順次説明致します。

@使役を表す助動詞として動詞を用いるもの。

★「使(令・教・遣・俾)〜」

 〜(セ)しム(読み・・これらの漢字は、元来動詞ですので、「〜を使ふ」「〜に令す」「〜に教ふ」「〜を遣はす」など、動詞本来の読み方をする場合も多く有りますので、判別に十分注意してください)・〜させる・〜とさせる(意味)

 令メテ(レ)(二)ラ(一)ヲ而殺サン(レ)(其の罪を知らしめて之を殺さん。)

 民ク(レ)使ム(レ)ラ(レ)、不(レ)カラ(レ)使ム(レ)ラ(レ)(民は之に由らしむ可く、之を知らしむ可からず。)

★「使(令・教・遣・俾)〜 〜」

 〜ヲシテ〜(セ)しム(読み・・これらの漢字は、元来動詞ですので、「〜を使ふ」「〜に令す」「〜に教ふ」「〜を遣はす」など、動詞本来の読み方をする場合も多く有りますので、判別に十分注意してください)・〜に〜させる・〜を〜にする(意味)

 子路使(三)ム子羔ヲシテ(二)ラ(一)ト(子路子羔をして費の宰と爲らしむ。)

 令(二)ム將軍ヲシテ(レ)臣有ラ(一レ)郤。(將軍をして臣と郤有らしむ。)

A使役の意味を暗示する動詞を用いるもの。

★「命・授・説・召・擧・勸・招・戒・詔・敕・遣・教」などです(読み・・勧誘や説得・命令などの意味を表す他動詞が有る場合には、その下の動詞に「〜シ(ム)」と使役の送り仮名を付けます)

 命(二)ジ豎子(一)ニシテ(レ)シム(レ)(豎子に命じ雁を殺して之を烹しむ。)

 魏主有リ(レ)疾。召(二)シテ司馬懿(一)ヲ入朝セシム(魏主疾有り。司馬懿を召して入朝せしむ。)

B前後の文脈や内容から使役に読むもの。

★Aと明白な区別は有りませんが、例え使役の意味を暗示する動詞が使われていなくても、前後の文脈や文意の内容から判断して、「〜シ(ム)」と使役の送り仮名を付けます。

 管仲(二)テ(一)ヲタラシム(管仲は其の君を以て霸たらしむ。)

 凡(二)レシメシ於厄(一)ヨリ、皆平日可キノ(レ)人也。(凡そ吾を厄より免れしめし者は、皆平日畏る可きの人なり。)

C使役を表す助動詞として動詞を用い、仮定を表すもの。

★「使(令・教・遣・俾)〜 〜」

 〜ヲシテ〜(セ)しメバ(読み・・使役の仮定の場合は、未然形の「しメバ」と読み、決して已然形の「しムレバ」とは読みません。)・〜に〜させたならば・〜を〜としたならば(意味・・これは本来、仮定形の句形ですが、使役を表す助動詞として動詞を用い、仮定の句形を構成していますので、使役の句形の一つとして、説明します。)

 但使(二)メバ龍城飛將ヲシテ(一)ラ、不ラン(レ)(三)メ胡馬ヲシテ(二)ラ陰山(一)ヲ(但だ龍城の飛將をして在らしめば、胡馬をして陰山を度らしめざらん。)

 向使(三)メバ陳餘ヲシテシク(二)カラ於信(一)ヨリ、信豈ン(レ)ルヲ(レ)哉。(向に陳餘をして少しく信より黠からしめば、信豈に敗れざるを得んや。)

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 受身型の代表的パターン

 受身形とは、「他からの働きかけに因って、〜されるという意を表す」語法で、大きく分けて「五種類」が有ります。

@受身を表す助動詞として動詞を用いるもの。

A「爲〜所〜」の形を用いるもの。

B前置詞の「於・于・乎」を用いて受身を表すも の。

C受身の意味を暗示する動詞を用いるもの。

D前後の文脈や内容から受身に読むもの。

 以下、これらを順次説明致します。

@受身を表す助動詞として動詞を用いるもの。

★「被(見・爲・所・遇・受・取)〜」

 〜(セ)る・〜(セ)らル(読み・・これらの漢字は、元来動詞ですので、「〜を被る」「〜を見る」「〜と爲る」「〜に遇ふ」「〜を取る」など、動詞本来の読み方をする場合も多く有りますので、判別に十分注意してください)・〜される・〜の目にあう(意味)

 被ルコト(レ)(レ)(二)ナラニ(一レ)鷄。(驅らるること犬と鷄とに異ならず。)

 信ニシテ而見(レ)、忠ニシテ而被(レ)(信にして疑はれ、忠にして謗らる。)

A「爲〜所〜」の形を用いるもの。

★「〜の爲に〜せ所る」の形で読んでも、「〜の〜する所と爲る」の形で読んでも、意味は共に変わらず、「〜に〜される・〜に〜された」「〜の〜するところとなる・〜の〜するところとなった」となります。

 爲(二)ニ將王翦(一)ノルル(レ)也。(秦の將王翦の爲に戮せらるるなり。)

 爲(二)ル將王翦ト(一レ)スル也。(秦の將王翦の戮する所と爲るなり。)

B前置詞の「於・于・乎」を用いて受身を表すもの。

★前置詞の下には名詞が置かれ、その名詞から前置詞の上の動詞に返り、「〜ニ〜(ラ)ル」と読み、「〜に〜される」という意味を表します。

 趙數困(二)メラル於秦(一)ニ(趙は數しば秦に困めらる。)

 獲(二)ラルルニ乎上(一)ニリ(レ)道。(上に獲らるるに道有り。)

C受身の意味を暗示する動詞を用いるもの。

★「封・謫・任・拜・補・敍・賜・禄・誅・廢・殺・削」などです(読み・・これらの動詞が使われている文章の主体が、目下の立場である場合には、その動詞に「〜(ラ)ル」と受身の送り仮名を付けます)

 以テ(レ)(二)ゼラル武安侯(一)ニ(功を以て武安侯に封ぜらる。)

 聞(三)ク(二)セラレシヲ九江(一)ニ(君の九江に謫せられしを聞く。)

D前後の文脈や内容から受身に読むもの。

★Cと明白な区別は有りませんが、例え受身の意味を暗示する動詞が使われていなくても、前後の文脈や文意の内容から判断して、「〜(ラ)ル」と受身の送り仮名を付けます。

 仁ナレバ、不仁ナレバメラル(仁なれば則ち榮え、不仁なれば則ち辱めらる。)

 狡兔死シテ走狗烹ラレ、飛鳥盡キテ良弓藏メラル(狡兔死して走狗烹られ、飛鳥盡きて良弓藏めらる。)

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 如何でしたでしょうか、訓読や漢字の面白さや楽しさが理解頂けたでしょうか。一寸でも「面白いなあ」と感じた人は、さあ、漢文を訓読しましょう。

   茲欲以拙文補于吾生無知與健忘也

          歳在癸未夏月                             識於黄虎洞


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