M: |
「ところで,そのほかに研究報告でやらなければならないことは?」 |
K: |
「各個人が疑問に思ったことをみんなで議論するために,質問表を作成しますね。」 |
N: |
「『その質問をなぜしたのか』っていうこと,つまり質問の意図も聞かれるしね。」
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K: |
「ただ何となくわからないっていうだけじゃ,ダメだよね。」
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M: |
「質問に至るまでにどんなことをやったのか,っていうのが求められるということだよね。プロセスの充実というか・・・。どこからどこまでがわかって,どこからどこまでがわからないのか,っていうことを明らかにして,質問しなければならないということだよ。」 |
K: |
「そのプロセスを経るからこそ,みんなで充実した議論ができるんですよね。」
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M: |
「
それって,各個人が質問に答えることに関してもいえるよね。」 |
N: |
「つまり,答える側も,もしその質問について的確に答えることができない場合は,ここまではわかっているけど,ここからはわからない,っていうことをハッキリさせるということですね。『わからないことをわかる』というか。」
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K: |
「僕もそう思います。ただ『わかりません』では通用しませんね。もしわからなくても,それまでのプロセスを充実させてゼミに望むというか・・・。ハッキリ言って,はじめからわかっているんだったら,ゼミをやる意味がないわけだし。」
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M: |
「それがゼミ生に求められることじゃないでしょうか。質問をするにも,質問に答えるにも,そこに至るまでのプロセスを充実させてゼミに参加しなければいけない,っていうことです。」 |
K: |
「夏期合宿はどうだった?」 |
N: |
「一応,2年生の春休みに春期合宿に参加しているから,合宿は2回目っていうことになるけど。」
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K: |
「とにかく合宿で思うのは,質問を考えたり,テキストの参考文献を読んだり,事前準備が大変だよね。」 |
N: |
「その事前準備にいかに時間をかけたかっていうことが,研究報告の時に如実にでるというか・・・。」 |
M: |
「事前準備の大切さは,普段の授業でも同じでしょ?」 |
K: |
「そうですね。ただ,普段の授業と違うのは,短い日程で集中的に一冊のテキストについて研究報告を行うので,使用するテキストが決まった段階から,すぐに資料集めなどの事前準備をしなければならないということですね。」
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M: |
「大学の勉強っていうのは,ただ机に向かえばよいというのではなくて,自分で資料なり参考文献なりを集めるってことも要求されるよね。」
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K: |
「それに結構時間がかかる!」 |
M: |
「だから,要領よく資料を集めることも大切になってくるよね。」 |
N: |
「要領よく?」 |
M: |
「うん。基本的には資料集めは時間のかかるものだけど,どんな資料がどこにあるのか,っていうことを前もって知っておけば,随分と時間のロスは防げるんじゃないかな。 |
最低限,うちの大学の図書館にはどんな雑誌や紀要があるのか,また図書館のどこにあるのか,ということをバックナンバーも含めて事前に調べておく必要があるよね。」 |
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N: |
「事前準備の事前準備ですね。」 |
K: |
「これは,去年の11月ごろからやり始めた研究報告のスタイルだけど,テキストを使用した研究報告の応用編って感じだよね。」 |
N: |
「いわゆる『地獄方式』!(笑)」 |
K: |
「テーマ方式の研究報告っていうのは,財務会計の領域で現在問題となっているいくつか点について全員で検討する方式です。ある1つのテーマについてレポートを作成し,自分の考えを明らかにする,というものですよね。」
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M: |
「テキストを使用した研究報告も大変だったと思うけど,一応テキストっていう『バイブル』(笑)があったから,それに沿ってやっていけばよかった。でもこの方式では,その『バイブル』がない。」 |
N: |
「つまり,自分で一から組み立てていかなければならないっていうことですね。」 |
K: |
「自分の考えを組み立てるためには,その基盤がしっかりとしていないとすごく脆いものになってしまう。」 |
M: |
「そうですね。しっかりとした基盤を作るために,たくさん参考文献を集めて,そのテーマについて特に問題になっているところなどをキチンと押さえなければならないよね。」 |
N: |
「あるテーマのうちで,どこに焦点をしぼるかっていうのは人それぞれだと思うけど,大体みんなおなじ部分についてレポートを作成してきましたよね。」 |
M: |
「みんな重要な論点をしっかり押さえていた,ということではないでしょうか。善意に解釈しておきましょう(笑)。」 |
N: |
「それにしてもすごく大変だったよね。テキスト方式が問題にならないくらい!」 |
K: |
「初めてホントに会計学をやっているって気がしたよ。」 |
M: |
「それは,あるテーマについて,他人の意見をそのまんま借りてきたのではなく,一から自分の考えを組み立てて,自分の意見を主張した,という充実感に違いないと思うよ。」 |
N: |
「うちのゼミは,春期合宿は毎年,ゼミへの入室が決まった2年生,つまり新3年生にも参加してもらっています。」 |
K: |
「ということで,このテーマについては,3年生のTくんとHくんにも対談に参加してもらいましょう。」 |
N: |
「さて,春期合宿はどうだった?」 |
T: |
「ただテキストだけを読んでくればいいってものではなかったですね。先輩方は,そのテキストに書いてある参考文献をしっかり集めて読んできていましたね。」
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H: |
「自分たちが描いていたゼミ像とはかなり違っていましたね。」 |
K: |
「どんなふうに違っていた?」 |
H: |
「事前準備もそうですけど,あんなに議論が活発に行われるとは思っていませんでしたよ。」 |
T: |
「そこまで突き詰めて議論するか?って感じですね。」 |
M: |
「突き詰めて議論するには,それ相応の準備が必要になるよね。つまり,4年生と3年生の違いは,それまでの蓄積も違うけど,基本的には事前準備への時間のかけかたでしょう。」 |
K: |
「そうですね。でも,事前準備に時間をかけるかかけないかっていうのは,精神的な部分にもかなり依存するのではないでしょうか?」 |
N: |
「要は『やる気』っていうことかな(笑)。」 |
K: |
「春期合宿に参加したことで,ゼミにどのような態度で望むべきか,っていうことが認識できたんだから,それだけで十分価値があったんじゃないかな。」 |
T& |
H:「そう思いますね。」 |
K: |
「卒業論文については,卒業生であるMさんに,4年生のNくんと私Kが質問していくかたちで話を進めていきましょう。」 |
N: |
「漠然とした質問なんですけど,まず卒業論文って何ですか?」 |
M: |
「そうですねぇ。一言でいえば,『4年間の集大成』ということになるでしょう。4年間で学んだことのすべてをそこにぶつけるんです。その大部分が,板橋時代にゼミに所属した2年間で学んだことになりますよね。東松山時代は,みんなほとんど勉強していなかったでしょうから(笑)。」 |
K: |
「どのようにテーマを設定したのですか?」 |
M: |
「簡単にいえば,日々の勉強の中で自分が興味をもったところですね。そうはいっても,なかなか興味のある部分がなかったり,逆にあり過ぎたりといったように,テーマ設定には難しいものがありますよね。みんなその部分に苦労しているんじゃないのかな?そういう場合にはゼミの先生に相談するのが一番です。もちろん,何の準備もしないで先生に聞きにいってもダメですよ(笑)。 |
また,自分でもいろんな文献を読んだりして,どんな部分が問題となっている,あるいは問題となっていたのか,その問題は卒論として扱うのに適しているのか,といったことを考えながら,テーマを絞り込んでいくのがよい方法でしょう。若干,ありきたりな答えになってしまいましたが。」 |
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N: |
「『卒論として扱うのに適している』っていうのは,具体的にどういうことですか?」
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M: |
「これは,自分が卒論を作成するのに適しているテーマ,ということです。ですから,各個人で基準がバラバラということになります。でも普通は,各ゼミで勉強している学問領域の中でテーマを決めますよね。また量的には,だいたい400字詰め原稿用紙に換算して何枚以上っていう枚数が決められているんじゃないのかな。僕の知っている限りでは,標準的には30〜50枚,多いところでも100枚ぐらいだと思います。基本的には,その枚数を満たすことができるくらいのテーマを設定するのがよいでしょう。 |
それぐらいの枚数ですから,あまり大きなテーマは設定できないでしょうね。ただ,その枚数っていうのは,おそらく必要最低限の枚数でしょうから,自分でそれ以上の枚数を設定してもいいわけです。つまり,これが先ほどいった『各個人で基準がバラバラ』ということです。 |
まぁ,枚数は多めに設定した方がいいでしょう。最終的には,必要のない部分を削ったり,逆にもう少し突っ込んで書きたいと思う部分に肉付けしたりするわけですが,多少量を多めに書いておいた方が,後々そういった推敲の作業を効率よくできるでしょう。結構,いらない部分を削ることになるでしょうから。多めに書いておけば,ギリギリになって『枚数が足らない!』という悲劇(笑)も回避することができるでしょうし。」 |
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K: |
「参考文献の量などとのかね合いは?」 |
M: |
「参考文献がなるべく多いテーマを選んだ方がよいでしょう。少ないテーマだと大変ですよ。参考にするものが少ないということは,それだけ参考文献を通して考えたりする機会が少ないわけですし,また,いろんな人のさまざまな角度から見た見解というのに触れるチャンスが少ないわけですから。 |
ただ,参考文献が多い場合には,どの文献が有用で,どの文献が有用でないか,という選別が特に重要になってきます。選別するためには,チラッとでも目を通さなければなりませんから,多いなら多いなりに大変ですが・・・。 |
こんなことをいうのも何ですが,卒論を料理に例えると,参考文献はその材料ということになりますよね。材料が多ければ多いほど,手の込んだおいしい料理が作れるといえるでしょう。料理人に求められるのは,材料を調理することだけではなく,その前段階で,その材料を選別して仕入れる,つまり目利きすることも必要とされるわけです。卒論もそれと同じだと思いますね。」 |
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N: |
「卒論作成上,最も苦労した点はなんですか?」
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M: |
「自分の主張したいことが上手く表現できなかったりしたときですね。あと,論をどう展開させたらよいかわからなくなったときでしょうか。 |
こういった困難を打開するためには,もっともっと参考文献を読む必要がありますね。アウトプットの段階で行きづまってしまうのは,インプットの量が絶対的に足りないというのが主な原因ではないでしょうか。さらにたくさんの文献を読むのは大変でしょうが,その困難を乗り越えたときには,きっと大きな成果が得られると思いますよ。 |
何らかの成果を得るためには,それに見合う代償が必要ですよね。『困難=代償』と思って,前向きに頑張るしかないでしょう。どこかで読んだことがありますよ,『チャンスはつらいものだ』って。」 |
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N: |
「逆に言えば,『つらいときはチャンス』ってことになりますよね。つまり,その困難は,卒論をさらによいものにするための試練だといえますよね。」 |
K: |
「随分と話が一般論になってしまったような・・・。」 |
M: |
「申し訳ない(笑)。そうですねぇ,あと気分転換も必要ですね。」 |
K: |
「その点,うちのゼミは気分転換が多い!」 |
N: |
「飲み会やら,ボーリング大会やら・・・。」 |
M: |
「普段頑張っているからこそ,そういう息抜きが必要になるよね。卒論を書いているときも,適度な気分転換を忘れずに。」 |
N: |
「他には何かありますか?」 |
M: |
「まぁ,これはどんなことにも共通することですけど,『早く始める』ってことですよね。先手必勝です。」 |
K: |
「それは僕らが一番不得意なことじゃないですか。」 |
N: |
「黙秘します(爆笑)。」 |
M: |
「早く書き始めれば,例えば本や学術雑誌の目次などを見るにしても,自分のテーマに関するキーワードが自然と目に入ってくるんですよ。『あっ,ここは関係ありそうだな』ってね。 |
あとは,自分から『いつ頃までに提出する』って先生に宣言しちゃうんですよ。つまり,自分からプレッシャーをかけてしまうんです。そうすれば,いやでも手を付けなければならない。ちなみに僕は,自分で宣言した期限から約2ヶ月ほど遅れてしまいましたが(笑)。」 |
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K: |
「なるほど。いやぁ,卒論を書くって大変なんですね。」 |
N: |
「僕たちが書けるんでしょうか?」 |
M: |
「大丈夫ですよ。みんな卒論を書いて卒業していったわけですから。」 |
K& |
N:「ありがとうございました。」 |
M: |
「それでは最後に,KくんとNくんに1年間のゼミの感想を述べてもらいましょう。」 |
K: |
「うちのゼミは勉強も大変ですけど,それ以外にもゼミ長や合宿係,ホームページ作成係など,ゼミをより充実したものにするために,ゼミ生同士でいくつかの役割を分担します。 |
そこで各個人に,分担する役割についての責任感が必要となります。そういう状況では,個人としての存在だけでなく,組織としての存在も求められます。 |
ですから,このような経験を通して,社会人になるための人格も自然と形成されるのではないでしょうか。こういったことから,非常に充実した学生生活が送れると思いますし,実際,僕自身も送っていると思います。」 |
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N: |
「ゼミでの議論を通して,自分の考えを筋道たてて表現することの必要性を認識できました。また,議論を何回も重ねることにより,自分に合った表現方法を確立することができたと思います。 |
相手に自分の考えを伝えることの難しさも同時に学びましたけどね。まぁ,『理解と誤解は裏表』ともいうじゃないですか(笑)。 |
話があさっての方にいってしまいましたが,とにかく,ゼミで学んだことは,将来大きな糧となるんじゃないでしょうか。随分手応えは感じてますけどね,現時点でも。」 |
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M: |
「へぇ。1年前とは見違えるくらい立派になったね,二人とも(笑)。先輩としてうれしい限りです。では,来たるゼミ生に一言。」 |
K: |
「山崎ゼミは,コストも大きいけど,それ以上にベネフィットも大きいです。」 |
M: |
「つまり,大変だけれども,その分,得るものも大きいということですね。」 |
K: |
「ええ,その通りです。」 |
N: |
「僕は向上心のある人に入室して欲しいです。前向きな人がいいですね。」 |
M: |
「それが一番大切なことだと思います。ありがとうございました。」 |