GPSを使う

GPSの関する一連の記事が書かれて6年近く経過しています。 2010年に測地衛星「みちびき1号」が、2017年6月1日に「みちびき2号」の打ち上げに成功し、日本は自身でGPS互換システムを確立しつつあり、大きな意義が期待されています(ここではGPSをアメリカ合衆国が運用しているGlobal Positioning Systemを指すとします)。 このページだけですが、書き加えました。

追加[2017-06/01]:みちびき--日本の衛星測位システム

日本政府は、 2010年の「みちびき1号」、2017年6月1日に打ち上げた「みちびき2号」に引き続き、2017年度内に「みちびき3号と4号」を、最終的には2023年程度までに7台程度の測地衛星の運用を計画しています( なぜ今、みちびきが必要とされているのか)。

測地衛星としての「みちびき」の大きな特徴は、その性能にも大きく関わりますが

であることにあります。 天頂とは、空を仰いだとき、真上方向を意味します。 準天頂軌道とは、ある定めた地上から衛星を見上げたときに、概ね天頂付近に視えている(地平線の下に隠れない)ような衛星軌道を意味します。

測地衛星の軌道が準天頂軌道に近いと、多くの時間にわたって衛星からの測地データを直接受信することができます。 アメリカ合衆国が運用しているGPSでは、衛星を地球周回軌道に乗せていています。 正確な測位を行うためには理論的には3つ以上の衛星が見えていなければならず、地球全域をカバーするためには、24個以上の衛星が必要になります(その代わりに、地球全域で正確な測位が可能になります)。現在、30個程度の体制で運用をしています。

「みちびき」の基本的な測位の考え方は、 地球上の特定領域(たとえば日本周辺)での正確な測位のためには、測地衛星を準天頂軌道に乗せて少ない数の衛星(理論的には3個)を運用すれば足りるというものです。 現実的には5個から8個程度用意すれば大変高い精度(cm単位)で測位できます。

また、測地衛星を準天頂軌道に乗せて高い精度で測位を実現するシステムは、地球規模での軍事的な脅威とはなりにくいという「利点」もあります(GPSを運用しているアメリカ合衆国は、地球上のあらゆる地点を正確な攻撃目標とすることができます)。 「みちびき」は日本からオセアニア地域に高い精度の測位サービスを実現する、「安価」で「平和」な衛星測位システムということができます。

演習: みちびきの準天頂軌道とは自転している地球表面に対して「8の字」を描くようにウツ挙げられています。 測地衛星をどのような軌道に乗せると準天頂軌道となるかを説明しなさい。
[ヒント]:静止衛星は地球自転軸に垂直な大円(緯度0度の赤道)上空を地球の自転周期と同じ約24時間で周回する高度約35,786kmで軌道傾斜角0の円軌道である(静止衛星に光を反射させると往復で7万キロ、約1/4秒を要する)。

みちびき情報はどうやって使えるようになるのか

GPSやみちびきなどの衛星測位システムは、それを受信して活用できる機器やソフトウエアシステムが必要です。 GPS電波用のチップと受信アンテナは既に安価に販売されており、広く様々な機器で使われています(Raspberry Piなどの小型コンピュータに自分で組み込んで利用できる状況にあります)。

みちびき対応製品リストに、みちびき対応機器リストがあります。 また、「みちびき」対応GPS受信機キットも2000円台で市販されるようになってきました。

みちびきFAQ

みちびきの技術情報は JAXA提供のページFAQよくあるお問い合わせなどを参考してください。

改訂「個人情報保護法」との関連

くしくも、改訂「個人情報保護法」が2017年5月30日に全面施行されました。 改訂の柱のひとつに「匿名加工情報の活用」が認められたことが挙げられます。 法律は、位置情報は個人情報であると規定していますが、位置情報の取得・利用・第三者提供について(プライバシー上のリスク説明を含めて)、個別かつ明確に利用者の同意を得たうえであれば、「十分な匿名化」がされた位置情報については、利用者の同意なく利用・第三者提供することが可能になりました。

高い精度の測位情報を衛星安否確認サービスとして提供する計画も検討されています。 人命に関わる災害などの緊急時に個人の位置情報の活用が促進されることになるでしょう。


位置情報は高度な個人情報である

これ以降、自分(または友人と)のGPS位置情報を地図表示させる演習を行います。 場合によっては、その結果をシェアして(限定的だとしても)共有することも考えています。 言うまでもないことですが、現在の社会常識では個人の行動履歴(とくにその位置情報)は(少なくとも一部の政治家などを除けば)個人に属するきわめて高度なプライベートな情報だと考えられています(「何処にいってたの?」を聞かれて小さなウソをついた経験は誰にでもあるはず)。

何時何処に立ち寄っていたか(何をしていたかはわからないとしても)をどんなに親しい人や友人であっても無条件に知られたり、モニタリンクされていて平気な人はいない。行動情報をどのように取り扱うかは、社会が自ずから決めて行くべきことの大きな問題の1つです。 たとえば、次のような世界を受け入れるの早いかもしれません

UnLoc:ほとんど誤差のない屋内用位置情報記録システム

位置情報だけが行動履歴ではない

念のためにいっておくと、行動情報は位置だけではありません。 位置情報だけを秘密にしながら一方でネットワーク行動の履歴が筒抜けであったり、逆に、個人情報保護と声高に叫びながらSNSなどで人の個人情報を垂れ流す人もいます。 ネットワークに厳しく接している一方で、デリケートな資料の取り扱いがぞんざいな人々や組織も少なくありません。 こうした状況は、なにかしらバランスを欠いていると言わざるをえません。

たとえば、Webページ閲覧について、たとえば、どのサイトのどんなページをどの順番で閲覧したかはWebサイト側だけでなくネットワーク組織内にある代理サーバ(ある組織内からの閲覧はproxyを経由してのみ可能にする仕組み)によって、またページ内でマウスをどのように動かしたかや、今まで何を購入したなど個人(あるいは勝手に振られた認識番号)に紐付けされて接続先のWebサーバ側に収集記録されています。 メールについても(特にHTMLメールはほぼ間違いなく)個人(またはアドレス)に紐付けされてメールの閲覧行動などが相手側に知られ収集されています。

収集され続ける行動履歴

得られた情報はセキュリティ対策にも利用されますが、個人行動を詳しく知ることは、国家だけでなく企業も大いなる関心をもっています。 Webサイトが収集した情報は自社のためではなく第三者である企業マーケティング材料にその情報を開示している場合も多いのです。 集団行動からの統計だけでなく、国医・地域別、性別、年齢別、職業別、購入や広告クリックなどの行動履歴別に紐付けられた行動履歴は、大変正確なマーケティングやピンポイント広告を打つことを可能にするからです。 そのような履歴から、次の行動が高い精度で予測され、何を欲しているかが分かるからです。

どのようにして、こうした行動履歴を収集することができるのでしょうか? 驚くべきテクニックが使われていることもありますが、一方で私たち自身が進んで情報を提供している場合も少なくないのです。 気楽にクイズにに応募したり、この程度なら大丈夫だろうと考えてアンケートに答えたりしていませんか?HTMLメールを(画像などを)無条件に表示するように設定していませんか?断片的な行動をつなぎ合わせて全体的に個人を特定するようなことができるということを知っておくべきです(警察や探偵だけが拾い集めた断片をつなぎ合わせようとしているのではないのです)。

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