信号待ち交差点

20周年記念号刊行によせて

篠田 隆 | 2007.10.25

 大東文化大学国際関係学部は学部創設20周年(1986年4月開設)を迎えました。学部創設時の高坂駅周辺はほんとうに閑散としたものでしたが、当時数少なかった「国際関係」を冠する学部の一員として、学部にどのような内実を与えてゆくのか、教職員も学生も手探りの状態で、その緊張感が快く感じられたことを記憶しています。

 この20年間に学部や大学を取り巻く状況は大きく変化しました。80年代後半からのバブル経済は90年代初頭に崩壊し、長期間にわたる平成不況に入りました。閉塞した時代状況のなかで、「ニート」や「パラサイトシングル」などの造語もうみだされるほど、若者の社会観や人生観が変化しました。少子化も急速に進行し、大学再編の時代を迎えます。そのなかで教育の質も厳しく問われることになります。大学や学部がどのような理念のもとでどのような人材を養成しようとするのかを、卒業生や父兄を含む大学関係者のネットワーク化のなかで検討していくことが、大学学部を活性化し、その社会的役割を高めるために必要になっています。

 国際関係学部は創設20周年の記念事業を推進するために、昨年4月に「20周年記念事業委員会」を編成し、記念事業の実施に向けて検討と準備を進めてきました。今回の記念事業の内容は、(1)記念刊行物の発行(2)記念式典と祝賀会の開催の2つに絞られました。

 同委員会には、企画に卒業生や在校生のアイディアを反映させるために、教職員委員のほかに、卒業生と在校生若干名にも委員として参加してもらいました。大学や学部の創設を記念する事業は、ともすると「教職員による教職員のための」記念事業になりがちですが、国際関係学部の20周年記念事業では、企画編集の段階から卒業生と在校生委員に参加してもらい、卒業生と在校生はもちろんのこと、父兄やその他学園関連者にも興味をもってもらえるような内容、かつ外部に対しても国際関係学部の独自性や個性をアピールできるような内容になるように工夫しました。

 記念刊行物は、できるだけ人物に焦点を当て、気軽に読め、かつ読んで面白い内容になるように配慮しました。目次を一読していただければわかるように、多数の卒業生、在校生そして教職員の皆様に執筆していただくことができました。いずれの文章からも国際関係学部に対する思い入れの深さが伝わり、共感のもてる内容になっています。

 とくに、卒業生の文章は力作揃いで、現地研修、留学あるいは貧乏旅行を通しての他のアジア諸国との交流が、現在の彼らの旺盛な行動力としなやかな価値観の原点になっていることが確認できます。

 現職教員の寄せ書きは着任年度順に配置しました。卒業生が在学時に直接お世話になった先生方、卒業後に着任された先生方の区別がはっきりとします。定年退職された先生方からいただいたメッセージは、現地提携校からのメッセージとともに、祝辞の欄に掲載しました。

 対談は本記念号の背骨にあたります。対談には教員、卒業生、在校生の有志が参加してくれました。国際関係学部が辿ってきたこの20年間の道筋が、裏話を含め、よく理解できます。

 結局、人間にとっての最高の財産は、ひととのつながりの深さと多様さだと考えます。学生時代の友人、恩師、職員とのつながりを卒業アルバムに閉じ込めておくのは勿体無い気がします。今回の20周年記念事業が、卒業生、在校生、父兄、教職員など学部関係者のネットワーク強化の一助になることを強く願います。元気の源泉となるような、場合によっては、人生観や価値観をひっくり返してくれるような再会になることを祈ります。

(20周年記念誌に「20周年記念事業委員会」の一員として書いたものを、再録しました)

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