雑文 汚れた聖河の環境改善 1/2

インド聖河の流域浄化計画

 先日、北インドを流れる聖河ヤムナー河の流域諸都市で都市衛生環境を改善することを目的としたプロジェクトの調査を行った。インドでは1980年代から大河川の流域浄化を国策に掲げ、ガンジス河を手始めに各地で環境改善事業を開始した。工業排水、農業排水、ゴミ投棄、未処理の生活雑排水はいうにおよばず、死体や家畜による河川の汚染が許容できない水準に達したためである。インド政府は世銀や日本などからの財政支援も仰ぎながら、生活雑排水と死体の処理に焦点を絞った実行計画を現在推進している。下水道の敷設、公衆便所・個人便所の建設、斎場の増設などがその内容をなしている。

 確かにヤムナー河岸にたつと、水牛の群れがあちこちで優雅に水浴を楽しんでいる。水牛は日に10キロは排便する。そのかなりの部分が河に流れる。また、河岸には多くの斎場が設けられている。薪が十分でない場合には、半焼けのまま河に流される。薪が買えなければ水葬される。インド10億人の約80%はヒンドゥー教徒である。河川流域のヒンドゥー教徒のほとんどは死体あるいは遺灰の形で河に帰る。さらに、河のあちこちに繋がる自然排水溝。下水道の敷設されていない地域の生活雑排水が低地を縫い河に辿り着いたもの。「三寸流れれば水清し」とは自己浄化能力がいまだ健在な河川のこと。ありとあらゆるものを呑み込み消化不良に陥っているのが現在の聖河。水量の減少する乾期には河が下水溝になると表現する人もいる。聖河での沐浴は今生の至福であるが、今では汚染のひどい所では地元の人々でさえ沐浴は行わない。

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