雑文 汚れた聖河の環境改善 2/2

インド聖河の流域浄化計画

 上記プロジェクトでは当初、経費と時間の両面で効率のよい電気式火葬炉を考えたが、火葬炉が密閉式になるため魂が中空に抜け出せないとの反対があり、開放式の改良型火葬炉を建設した。荼毘の煙りとともに身体を抜け出た魂は月にいたり、そこで生前の行為を基準に涅槃に落ち着くか、輪廻を続けるか決せられるという宗教思想の影響力はいまだ大きい。経費と時間節約の観点から考案された改良型は高床式の火葬炉。病院にあるベッドからマットを取り除いた形状を想像願いたい。もちろん、材質は鉄。高床式は薪の火回りが格段に良くなるため、短時間で焼けるとともに、薪代も通常の半額(300ルピー=700円)で済む。しかし、実際の稼動率は極めて低い。薪が(間接的に死体が)地面に接していないことに対する宗教的・心理的抵抗が大きいのである。

 建設した公衆便所の維持運営はNGOがあたり、利用者から料金を徴収している。フリー・ライダー(ただ乗り)は持続的発展を阻害するとの発想からである。フリーの利用者からは1人1回1ルピー(2.5円;ただし、女性、子供、老人は無料)、定期的な家族単位の利用者には家族パスを発給し月額25ルピーを徴収する。繁華街に建設した便所の稼動率はたいへん高かったが、都市貧困層を対象としたスラムでの共同便所の利用は低調であった。現場での聞き取りの際に、便所の不衛生さ、料金の高さ、身についた野糞の習慣を変えることの難しさなどが指摘された。

 環境改善は人々の意識や生活習慣の変革を伴うたいへん困難な課題である。運動は緒についたばかりであり、現在、環境改善への参加主体(政府、地方自治体、NGO、住民組織あるいは受益者団体)間のネットワークの構築が試みられている。ガンジス河やヤムナー河の浄化が一日でも早く実現することを願い、運動の推移に注目したい。

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