雑文 インドの都市交通機関 3/5

2.使用交通機関の階級差

(2)路線バス・テンポー
 80年代以降の経済自由化政策は貧富の格差を拡大したともいわれている。時流に乗り切れなかった人々、セーフティ・ネットで保護されなかった人々は多数存在する。彼らの使う主要な交通機関は路線バスである。路線バスは待ち時間が長かったり、目的地に直接たどり着けないなど不便な面も多々あるが、料金はタクシーやリクシャーに比べはるかに安く庶民の足となっている。

 大きな都市自治体は市営バスを運営している。計画好きなインドのこと、路線の設定とバスの頻度については事前に利用者調査など行っているのだろうが、運用がついていかないのが実態である。保有するバスの稼働率は低く、運転手・車掌も慢性的に不足している。このため、計画どおりに乗客をさばくことはできない。バス・サービスが絶対的に不足するなか、とくに混雑する路線ではバス停での停車を恣意的にスキップしたり、バス停を大きく外れて停車したり、低速度で走ったまま乗客の乗降を促したりと危険きわまりない。結局、老人、女性、子供は混雑時にはなkなか乗車できないことになる。日本では近年、車内にシルバーシートが設けられているが、インドの路線バスには随分と昔から「女性席」が設けられている。

 テンポーは路線バスよりも小回りの利く私営の交通手段である。混雑する路線を補完するほか、路線外のコースも設定されている。料金は路線バスの倍ほどであるが、狭いながらも着席できること、バスよりスピードがあるため便利である。北インドの都市にみられる。

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