雑文 インドの都市交通機関 4/5

2.使用交通機関の階級差

(3)タクシー・リクシャー
 インドでは室内スペースの広いアンバサダ−がタクシーとして利用されている。タクシーの初乗り料金はリクシャーの4倍ほどかかるので、中産階級でもよほどの事情がない限り、タクシーは使わない。ただし、ムンバイー(ボンベイ)市のように中心部からリクシャーを閉め出している都市では利用せざるをえない場合もある。人数が多かったり、大きな荷物のある時はタクシーが便利である。いずれの都市でもタクシー用の料金表が準備されており、料金メーターも各タクシーに設置されている。しかし、メーターを使用しないで事前の交渉で料金を決めなければならないことも多い。地域の事情を知らなければ、当然「相場」よりも料金が高くされてしまう。後で相場の料金がわかり、「騙された」と憤る人がいるが、それはあくまでも交渉の結果であり、騙しでも何でもない。授業料だと割り切るのがよい。メーターを使用した場合であっても、地理がわからなければ遠回りかどうか確認できないので、結局同じことである。

 わたしが主に利用したのはリクシャーである。後部座席は大人2人がけ用であるが、無理をすれば大人3人はかけられる。リクシャーは日本の小型タクシーに相当する。インドに滞在したての頃は一々料金を交渉してから乗っていた。知人によると、相場より高めの料金になっているとのこと。外国人は「顔に値札が付いている」ので仕方がないかとおもっていたら、そのうちインド人であっても「他所者」は同じ扱いであることがわかってきた。「なるほど」と妙に納得したことを記憶している。慣れるにつれ、事前交渉なしで乗り込むようになった。料金の見当は付いているし、必要な場合には料金表を提示してもらった。それでも時折もめることはあった。深夜料金(夜11時以降は通常料金の50%増)や市外料金(市域の外に出た場合は通常料金の50%増)の適用をめぐるトラブルや運転者が料金表を所持していない場合など。リクシャーは料金が比較的安いため、通学児童の送迎用によく使われる。近所で同じ学校に通う児童をもつ親達が相談し、月極めでリクシャーの運転手と契約を結ぶ。スクールバスの不備、他の安価な送迎用交通手段の不在がリクシャーを使わざるをえない状況をつくっている。低学年の児童であれば、1台に6〜8名も折り重なるように詰め込まれる。その危険性についてたびたび報道はされるが、有効な代替案がないために、事態は改善していない。

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