現地研修報告 パキスタン(2009年度) 5/7

5.研修旅行

 イスラマーバードからラホールに移動するまでの2日間に、イスラマーバードとラワルピンディーの観光を行った。ラワルピンディーでは旧市街の一角を観光した。イスラマーバードではモスク、
展望台、それに民族博物館を見学した。モスクでは多数の現地の家族連れから声をかけられ、一緒に写真を撮ったり話したり有意義な時間を過ごすことができた。展望台からは多少霞んではいたが市内が眺望でき、訪ねた施設も確認できた。民族博物館ではパキスタン各地の民族、風俗の展示が素晴らしかった。
 ラホールでの研修後、帰路にケウラ岩塩鉱山を訪ね、鉱山内のミナールやモスクなどを見学した。パキスタンは世界でも有数の岩塩産国であることに学生はみな驚いた様子であった。その後、ラワルピンディーで2泊した。その間に、近くのタキシラを訪ね、仏教関連遺跡や博物館を見学する予定であったが、タリバーンによるテロ活動が活発化したので、タキシラ行きは中止した。

6.健康管理

 ラホールでの食事は、宿舎の馴染みのコックさんにつくってもらったので、体調をくずす学生は少なかった。それでも、ラホールに入る前の食事が合わず、2名の男子学生が不調を訴えた。コーディネーターのアドバイスにしたがい、新キャンパス内にある大学附置の診療所で診察をしてもらった。24時間、医師が常駐する診療所で、学内関係者(家族を含む)の診療費と薬代は無料であった。本学の学生たちも宿舎滞在ということで学内関係者との扱いとなった。適切な診断で、学生たちの体調はすぐに回復し、その後は順調に過ごすことができた。宿舎の設備とともに、診療所などの施設が整っており、健康管理のしやすい環境であった。

7.安全確保

 この数年間、パキスタンでの現地研修は提携校のあるラホールが比較的安全な状況のなかでラホールの滞在を主として実施してきた。小旅行では、タキシラなどラワルピンディー近郊の安全な地域のみで観光を行ってきた。しかし、本年度はペシャーワル以北でのタリバーンと政府軍の戦闘の余波が10月中旬以降、全国に拡大し、イスラマーバードやラワルピンディーのみならず、ラホールでも警察や軍事施設を目標としたテロが発生した。 今回の現地研修においては、新聞やテレビなどで最新のニュースを常に確認するとともに、コーディネーターのK先生、宿舎の支配人、現地旅行業者などと緊密に連絡を取り合いながら、学生の安全確保につとめた。現地滞在中に在パキスタン日本大使館に連絡をいれたほか、JICA事務所とも連絡をとりあった。都合3日ほど、引率者の判断で予防的安全確保の手段として、学生に宿舎での待機を指示した。
 10月中旬以降に立て続けに発生したタリバーンによるテロの全国的な拡大は、パキスタン全土に深刻な衝撃を与え、一般市民の日常的な生活にも影響が及んだ。現地研修隊の帰国後、イスラマーバードの国際イスラム大学で自爆テロが発生し、パキスタンの教育機関は暫く休校となった。パキスタンの状況は、隣国のアフガニスタンの状況と連動しているために、短期間での事態の好転は考えづらい状況である。来年度あるいはそれ以降の現地研修先を再考する必要があると考える。
 たとえば、パキスタンの状況が好転するまでの期間、代替地としてインドの教育機関でウルドゥー語の語学研修を行うのもひとつの選択肢である。インドにはウルドゥー語を教授できる教育機関が多数あるし、ウルドゥー語とヒンディー語の会話文は類似しているので、ヒンディー語圏であれば語学研修に大きな支障はない。提携校の新規開拓には時間を要するので、来年度からの実施を睨み、国際交流委員会などをとおして早急に検討をお願いしたい。

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